ビザ・インターナショナル(http://www.visa.co.jp/)は,クレジット・カードを使う新しい電子決済方式,「3-Dセキュア」の実証実験を,8月から開始すると発表した。3-Dセキュアはクレジット・カード番号に加えて,パスワードを入力しないと決済できないようにしたのが特徴。現行のクレジットカード決済に比べて,安全性が大きく高まるため,3-Dセキュアが普及すれば消費者向け電子取引にとって強力な追い風になる可能性が高い。

 クレジット・カードによる電子決済において,現在広く使われている「SSL方式」では,クレジット・カード番号を入力するだけで決済が完了する。このため盗難カードが不正に利用されるリスクがある。一方,ビザ・インターナショナルは,これまでより安全性の高い「SET」(secure electronic transaction)と呼ぶ決済方式を推進してきた。しかしSETは,利用者の端末側にウォレットと呼ぶ専用ソフトが必要で特定のWebブラウザでしか使えない,ECサイトに追加設備が必要などの理由から,普及が進んでいない。

 これらに対し3-Dセキュアでは,決済時にクレジット・カード番号に加えてパスワードを入力してもらうようにした。このパスワードによりカード会社は,カード番号を入力したのが本人であるかどうかを確認し,ECサイトの運営会社に保証できる。余分なソフトは不要で,Webブラウザだけで本人確認ができるのが利点だ。

 8月から開始する実験では,ディーシーカード(http://www.dccard.co.jp/)のカード会員2000人に参加してもらい,3-Dセキュアによる決済の安全性や手続きの簡便さ,3-Dセキュア・システムの安定性などを検証する。実験に利用可能なECサイトは,ソフマップ(http://www.sofmap.com/),東芝ダイレクトPC(http://www2.toshiba.co.jp/tdirect/),ソースネクスト(http://www.sourcenext.com/)。この三つのECサイトで,約3カ月間,3-Dセキュアを使った実験を行う。

 なお3-Dセキュアは,3ドメイン・セキュアの略。カード利用者を認証するカード発行会社である「イシュアー」,加盟店を認証するカード会社の「アクワイラー」,イシュアーとアクワイラーの間で取引や決済に関するデータの仲介をする「相互運用ドメイン」の三つが協力して,カード利用者と加盟店を相互認証する仕組みを指す。

西村 崇=日経コンピュータ