NECはACOS-4系メインフレームの新製品「i-PX7800」を6月29日から出荷する。新開発の64ビット・プロセサ「NOAH-5」を搭載することが特徴。ただし,NECは「お客様がメインフレーム上で新規に64ビット・アプリケーションを開発するケースは非常に少ないし,必然性もない」(NECソリューションの小林一彦執行役員常務)と判断。OSだけを64ビット化し,ユーザー・アプリケーションのアドレス空間は従来と同じく31ビット長に据え置いた。
その換わり,i-PX7800は,ハードウエアを複数の区画に分割し,そろぞれの区画で別々のOSを動かす「論理分割」機能を装備した。「各区画では,既存のACOS-4用アプリケーションがリコンパイルせずに動作する。これにより複数台のACOS-4を,1台のi-PX7800に統合したい,というマーケット・ニーズにこたえる」(小林執行役員)という。NECメインフレームの最大ユーザーである三井住友銀行は,この機能を使って,店群別に設置しているACOS-4系メインフレームを数台に統合する見通し。
前述の通り,i-PX7800におけるユーザー・アプリケーションのアドレス空間は,31ビット長だ。ただし,利用可能なメモリー容量は512Kバイトから1Gバイトに拡大した。OSは64ビット長(実際にはハードの制限で最大32GB)のアドレス空間を使って,広大なデータベース・バッファやメモリ常駐ファイルの利用が可能になる。
さらにNOAH-5自体の性能も,現行プロセサ「NOAH-4」の2.5倍になった。64ビットOSによる性能向上分と合わせて,システム・レベルでは現行機種の最大3倍の性能を発揮する,という。「NOAH-5を最大32個搭載する最上位機の性能は,IBMメインフレームの最上位機に勝るとも劣らない」と,NECの小林執行役員は主張する。このほかi-PX7800にプロセサやメモリーに障害が発生した際に,予備のプロセサやメモリーを自動的に組み込む機能を追加して,耐障害性も向上させた。
併せてNECは,今後のメインフレームの位置づけを明らかにした。メインフレームは既存アプリケーションのアップグレード向けに徹し,新規のアプリケーションはオープン系サーバーに任せる。これに備えて,NECはメイフレームとオープン系サーバーの連携機能を強化する。その第一弾として今年6月末以降,「iPakage」と呼ぶツール群を出荷する。ACOS-4系メインフレーム上のデータベースに,WebサーバーやJavaアプリケーションからアクセスするためのツールなどからなる。