レコード会社大手のソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は6月1日,ブロードバンド専用のエンタテインメント・サイト「MORRICH(モリッチ)(http://www.morrich.com/)」を開設した。同社に所属するアーティストのプロモーション・ビデオやインタビュー映像,イベントやコンサートのライブ中継など,MORRICH専用に制作した番組を常時20チャンネル程度を無料で放送する。コンテンツの配信速度は500kビット/秒と高速だ。このためダイヤルアップやISDN接続のユーザーは映像や音声が途絶し,放送を楽しむことができない。CATVやADSL接続のユーザー専用である。

 MORRICHの特徴は,視聴を含む情報提供と購買機能を,巧みにリンクしているところにある。例えば,あるアーティストのプロモーション・ビデオを放送中に,インフォメーション・ボタンをクリックすると,そのアーティストを紹介するWebサイトに飛ぶ。同様に,購買ボタンを押すと,SMEの音楽配信サイト「bitmusic」に飛び,該当の曲をその場で購入することができる。開発を担当したSMEデジタルネットワークグループの安部良一課長は,「これまでプロモーションしたい場合は,テレビや雑誌などのメディアを利用するしかなかった。しかし,MORRICHというメディアを持つことで,直接ユーザーに向けてプロモーションをすることができる」と,新事業の位置づけを語った。

SMEの盛田コーポレート・エグゼクティブ エイベックスが5月24日に同様の事業を開始するなど,このところブロードバンド・コンテンツ事業を立ち上げる企業が急増している。SMEの盛田昌夫コーポレイト・エグゼクティブは,「SMEのポータル・サイトは,月間のユニークユーザー数が100万人以上になった。インターネットでのライブ中継も1996年から手がけている。こうした経験やノウハウの集大成が,MORRICHだ」と説明した。続けて,「新聞などでブロードバンド時代と言われても,自分の目で実際に見てみないとよく分からない。有線ブロードネットワークスや全国のCATV会社などが,ブロードバンドのプラットフォームを整えつつある。しかし,その上にコンテンツが流れて初めて,ブロードバンド時代と言えるのではないか」と語った。

井上 理=日経コンピュータ