A&Iのセンターの外観 日本IBM系のシステム・インテグレータ,エー・アンド・アイ システムはこのほど,福島県喜多方市に建設したデータセンターの運用を開始した。サーバーを格納するマシン室の床面積は500平方メートルで,120以上のラックを収容できる。地元の喜多方市役所が住民情報管理業務をA&Iシステムに委託するなど,すでにユーザーも決まりつつある。

 地方都市に本格的なデータセンターを建設するのは珍しい。多くのデータセンターは,高速ネットワークに接続したり,技術者を確保するために,東京都内に集中していた。

2階部分の窓は少ない A&Iシステムの遠山巖会長は,地方にデータセンターを建設することのメリットをこう説明する。「都心と比べて低コストで十分な広さの土地を確保できる。ユーザーからサーバー台数を増やす要求がどれだけあっても対応できる。今回建築した建物の10倍の面積の土地を確保した」。土地代や建築費用,電源設備などデータセンターの稼動に必要なものを含む総工費は約10億円。A&Iシステムが株式公開で得た資金を活用してデータセンターを構築した。

 さらに,データセンターを更地に一から建設したため,都心のオフィスビルをデータセンターとして改造するのに比べて,「データセンターに必要な機能を妥協なく盛り込むことができた」(遠山会長)という。

エネルギー棟の内部にある発電機 例えば,サーバーを格納するマシン棟の2階部分は窓の少ない構造にし,火災の影響を受けにくくした。建物自体は震度7の地震にも耐える設計になっている。設計は,日本IBMの建築士が請け負った。

 マシン棟の隣りに建つエネルギー棟には,大型バッテリと発電機を備え,フル稼動状態で3日間の電源を供給できる。都心のデータセンターも発電設備を持っているが,消防法などの規制で燃料を十分蓄えられない場合もある。

煙感知システムや監視カメラの制御盤 建物への侵入を管理するセキュリティ対策も徹底した。敷地境界を監視するカメラや,非接触型ICカードなどを設置。データセンター内は三つのセキュリティ・エリアに分かれており,最重要エリアには社員の中でも一部の人しか立ち入ることができない。さらに,漏水検知システムや高感度の煙検知システム,ガス消化設備も用意した。

 インターネット接続回線は,電力系通信事業者10社が設立した「パワー・ネッツ・ジャパン」のバックボーンに接続している。

坂口 裕一=日経コンピュータ