産経新聞社は8月から,日本で初めてとなる新聞のデジタル配信サービス「NEWSVUE(ニュースビュウ)」を開始する。NEWSVUEは,新聞紙面のイメージ情報を高速インターネットのプロバイダを通じて配信するもの。利用者は,紙面構成やレイアウト,広告などが紙の新聞とまったく同じ「デジタル新聞」をパソコンで読める。「ほかの新聞社や雑誌社で,このサービスに参加してくれるところがあれば歓迎する」(清原武彦社長)。NEWSVUEの概要は,http://www.newsvue.net/で4月5日から公開される。

 山元強デジタル事業担当取締役は,「将来にわたって,ブロードバンド・サービスの利用者の1割を獲得するのが目標。若い世代の新聞離れに歯止めをかける効果も期待している。今回のサービスにより,紙の新聞の購読者がなくなるとは考えていない。紙は紙で付加価値があるので,併読されることになるだろう」と語る。

 配信された紙面イメージは,NEWSVUE専用のビューワで見る。ビューワは紙面イメージを最大で64倍に拡大および縮小する機能を備えており,利用者は文字などを自分の読みやすい大きさに調整できる。ハイパーリンク機能も備えており,記事をクリックすることによって別ページの関連記事に飛んだり,テレビ欄からフジテレビの番組宣伝ページを呼び出したりできる。範囲を指定してカラーで印刷することも可能。ただし,配信されるのはイメージ情報なので,文字による検索はできない。

 産経新聞社は8月から,産経新聞の朝刊および夕刊を「産経新聞デジタル版」,夕刊フジを「夕刊フジデジタル版」という名称で配信する。産経新聞は東京発行の最終版を使う。配信開始時刻は,朝刊が午前5時,夕刊が午後4時。著作権の関係から,配信するのは当日分と前日分に限定し,2日以上前の新聞はダウンロードできないようにする。購読料は未定だが,「月極料金とページ単位の料金の2本立てになる見込み」(山元取締役)。

 同社は実際の配信サービスを行うプロバイダとして,高速インターネット接続サービスを提供している3社と契約した。CATVによるインターネット接続サービスを提供しているアットホームジャパン(http://www.jp.home.com/)とエー・アイ・アイ(http://www.aii.co.jp/),光ファイバによる高速接続サービスを提供している有線ブロードネットワークス(http://www.usen.com/)である。

 5月にも一部地域で無料の試行サービスを始める。ただし,紙の新聞を扱っている販売店からは「反発はまったくない」(山元取締役)としているものの,産経新聞デジタル版は近畿圏の一部,夕刊フジデジタル版は首都圏と近畿圏で,配信しない。

 配信する紙面イメージは,紙の新聞を印刷する際に使う入稿データ(TIF形式)を独自形式に圧縮して作成する。32ページの朝刊でデータ量は30MBという。圧縮技術とビューワの開発に,ソフト会社のサピエンスが協力した。両社は,一連の紙面配信システムとビジネス・モデルについて特許を出願している。現在ビューワはWindows版だけだが,Macintosh版も開発している。(中村 正弘=日経コンピュータ