NECはインターネット事業「BIGLOBE」の事業戦略を見直す。BIGLOBE事業全体に占めるASP事業などの付加価値サービスの割合を拡大させる。BIGLOBEのうち,インターネット接続事業(ISP事業)の収益が急速に悪化していることが原因。1999年度に発表した「2002年度にはBIGLOBE全体で,1000万の会員を獲得する」という目標は死守する。

NECの鈴木執行役員 NECでBIGLOBE事業を担当する鈴木泰次NECソリューションズ執行役員常務は,「ISP事業を取り巻く環境があまりにも急速に変化した」とこぼす。昨年以降,NTTグループやKDDIといった通信事業者が相次いで電話料金込みの格安料金プランを打ち出したため,ISP間の競争が激化。これにともなって,「BIGLOBE会員を1人獲得するのにかかるコストが,1年前の数倍になっている」と鈴木執行役員は打ち明ける。

 もちろんNECも通信事業者への対抗して,月額2000円で時間無制限の定額コースを投入した。しかし,「料金の値下げは限界にきている。ISP事業は,存続が議論されるほど苦しい」と言う。

 NECは,BIGLOBE全体の会員数は,2001年3月時点で510万人と見込んでいる。「まずは当初計画通りに事業を拡大できている」(鈴木執行役員)。しかし,このうちの372万人を占めるISP事業の会員数は,今後,大きな伸びを期待できない。

 そこでNECは「1000万会員」の目標を達成するために,会員数の内訳の修正を余儀なくされた。1999年に発表した内訳はISP事業の会員が500万~710万人,BIGLOBEを使って提供するASPなどの付加価値サービスの会員が500万~600万人,重複会員を除いて合計1000万人だった。これをそれぞれ500万人と800万人に変更する。

 つまりBIGLOBEはISPから付加価値サービスへと事業の重点がシフトする。そのためにNECは,ASPサービスやBIGLOBEを基盤としたSIサービス,教育関連サービスなどの拡充に力を入れる。一般消費者向けのコンテンツも拡充し,ポータル・サイトとしての特色をより強く打ち出す。さらに携帯電話やPDA向けのコンテンツの提供も本格的に始める。例えば,3月29日にはPalm OS搭載PDA向けのポータル・サイト「PDA BIGLOBE(http://pda.biglobe.ne.jp/)をオープンした。「当社の力だけで付加価値サービスやコンテンツを充実させるには,限界がある。今後はこれまで以上に,他社とのアライアンスを推進していく」(鈴木執行役員)という。

 しかし,BIGLOBE事業を取り巻く状況が厳しいことに変わりはない。鈴木執行役員は「社長の西垣は利益が出ない事業があればすぐ,売ると言い出すからね」と冗談交じりに語る。だが,その心中は決して穏やかではないはずだ。

玉置 亮太=日経コンピュータ