SEやプログラマなどITプロフェッショナルの約9割がストレスが増大していると感じている。その原因は仕事量の増加や技術革新のスピード--。日経コンピュータが「IT Pro」の協力を得て行っている「ITプロフェッショナルのストレスに関する調査」の中間結果から,こんな実情が分かった。

図1●ストレスの増加となっている原因(複数回答)
図2●実際にストレス病にかかって専門医に治療を受けたり,あるいはカウンセラーに相談したことがあるITプロフェッショナルの割合(有効回答数1131)
 3月27日時点での有効回答数は1314人。このうち「ここ1~2年,ストレスが増えている」と回答したITプロフェッショナルの割合は,9割近い86.1%に及んだ。ストレスが増えている原因として最も多かったのは,「仕事が多く,精神的に追われている」で51.2%だった(図1)。ITブームによる開発案件の増加,システム開発期間の短期化という二つの要因が相まって,仕事量の増加を引き起こしているのだ。

 「上司や営業担当者が次々に案件を取ってくる。しかし彼らは技術知識の少ないためか,その案件の難易度や必要な時間を見極めることができず,結果として現場の技術者にしわ寄せがくる」(29歳男性,開発職,大手ITベンダー勤務)。「開発期間が以前よりも短くなっているにもかかわらず,十分な開発スキルを持つ人材は慢性的に不足している。このため,一人で抱える仕事の量は年々多くなっている」(24歳男性,開発職,大手ITベンダー勤務)。

 二番目に多かったのは「技術革新のスピードが早く,キャッチアップするのが大変」(41.6%)だった。「技術革新のスピードは早く,一時たりとも油断は許されない。通常の開発業務も忙しいため,以前ならば確保できたはずの勉強時間も捻出しにくくなっている」(29歳男性,開発職,中堅ITベンダー勤務)。「顧客はインターネットなどで最新の技術情報を見聞きして,『これはできるはず』と,その時点で最新のシステムを要求する。しかし現場のエンジニアが最新の技術を修得するには,ある程度の時間が必要だ。『やろうと思えばできること』と『与えられた時間と予算内で実現すること』は違うことを理解してもらえずに苦労している」(44歳男性,保守・運用担当,大手ITベンダー勤務)。

 これら二つの要因が特に多かったほか,「仕事の上で人間関係を維持するのが困難」が28.8%,「長時間勤務や休日出勤が続いており,体力的につらい」が28.5%と続いた。

 一方,「うつ病や自律神経失調症など,ストレス病にかかって治療を受けたことがある」と回答した人が10.8%と1割に達した。治療するほどではないが,「相談したことはある」と回答した人も9.0%おり,合わせると5人に1人の割合になる(図2)。この種の調査では回答者の多くがストレスに関して意識が高い。そのことを割り引いて考えても,かなり問題のある状況といえるだろう。「数年前に自律神経失調症にかかってしまったが,現在は回復して働きだしている。しかし我が社では『他社との競争に勝つため』として,システム構築料金の無茶な引き下げが行われている。我々現場のエンジニアにしわ寄せがきており,この先どれだけストレスに対処できるかどうか不安だ」(32歳男性,開発職,大手ITベンダー勤務)。

高下 義弘=日経コンピュータ

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