ドメイン名「goo.co.jp」の移転を7日に命じられた有限会社ポップコーンが,裁定を不服として,NTT-Xを相手取って提訴することが日経コンピュータの取材で明らかになった。ポップコーンは,移転命令の保留期限である2月20日までに,東京地方裁判所に提訴の手続きを済ませる。「goo.co.jp」に関する裁定は,紛争処理機関に移転を申し立てたNTT-Xが,国内で初めて移転命令を勝ち取ったこともあって注目を集めたが,結論は法廷に持ち越されることになる。

 ポップコーンは,提訴後,移転裁定を下したドメイン名紛争処理機関「工業所有権仲裁センター」に対して,必要書類を提出する方針。これにより同センターが下した移転裁定(http://www.ip-adr.gr.jp/jp_domain/jiken/saitei/jp2000-0002.html)の実施は見送られ,「goo.co.jp」の登録の所在は裁判所が下す確定判決に委ねられることになる。

 このドメイン紛争は昨年11月,NTT-Xが工業所有権仲裁センターに対して,「goo.co.jp」の移転を求める申し立てをしたことに始まる。NTT-Xは,「『goo.co.jp』は,NTT-Xが運営するポータル・サイト『gooサイト』と誤認混同を生ずる」,「ポップコーンは当該ドメイン名を,NTT-Xが所有する商標やgooサイトが持つ顧客吸引力を利用して,アダルト画像を掲載・提供するWebサイトへの転送目的のみに用いており,当該ドメイン名に対して何らの権利もしくは正当な利益を有していない」などと主張。この申し立てに対してポップコーンは,「『goo.co.jp』を登録・使用したのは,NTT-Xが『gooサイト』を始める前のことで,存在しないサービスに対して誤認混同を意識するはずがない」などと反論していた。

 NTT-Xとポップコーンの主張を審理した結果,工業所有権仲裁センターは2月7日,NTT-Xの訴えを認め「goo.co.jp」の登録権利を強制移転するように命じる裁定を下した。裁定を受けたポップコーンの代理人は,「今回の裁定が認められれば,大企業は,他人が登録しているドメイン名を,いくらでも奪い取れることになる。他人の登録後に,ふんだんにお金を使って,そのドメイン名に関するサービスを著名にすればよいことになってしまう。先願による自由取得ルールが認められているインターネットの世界において,こうした行為を認める裁定を看過することは,到底できない」と考え,提訴に踏み切ることにしたという。

 JPドメイン名の管理団体である日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が定めた「JPドメイン名紛争処理方針」によると,紛争処理機関がドメイン名登録の取消や移転の裁定を下した場合,通知後10営業日間は,裁定の実施が“保留”扱いになる。この間に移転を命じられた登録者が,命令を不服とする旨の提訴をしたことを証明する書類を紛争処理機関に提出すれば,移転命令の実施が見送られる。

井上 理=日経コンピュータ

日経コンピュータ2月26日号に,続報を掲載予定です。ご期待ください。