「世界最大のカード・ブランドを確立した当社の競合相手は,他のクレジット・カードではなく,キャッシュ(現金)だ」。来日したビザ・インターナショナルのルパート・G・キーリー アジア太平洋地域社長はこう語った。
キーリー社長によると,Visaブランドのクレジット・カードの利用率をさらに高めて,現金に対抗していくには,「Visaカードを使った,インターネット関連の決済サービスを強化していく必要がある。それには,インターネット上でより安全なクレジット・カード決済を実現しなければらない」(キーリー社長)。
こうした戦略を推進するために,ビザは独自のセキュリティ・プロトコル「3-D Secure」を開発した。3-D Secureは購買者と販売者間での認証機能を備えたセキュリティ・プロトコル。クレジット・カードを安全に決済するためのプロトコル「SET」と競合するものだ。キーリー社長によると,「3-D SecureはSETに比べて,処理が簡単で,加盟者やカード利用者が容易に使える」という。
欧米ではすでに3-D Secureを利用するためのパイロット・システムを稼働させており,今年前半から日本国内,シンガポール,香港などでも試験運用を開始する。同時に,ビザ・カードを発行する銀行やクレジット・カード会社に3-D Secureの採用を促す。
これまでビザは米マスター・カード,米マイクロソフトなどと共同でSETを開発し,普及させようとしていた。しかし,SETは処理の煩雑さや,SET対応のシステムの相互運用性の確保の難しさなどの課題があり,「あまり普及していない」とキーリー社長も認める。
3-D Secureに加え,ビザは次世代ICカード「コンビカード」も開発中だ。コンビカードは,接触および非接触のインタフェースを統合した多機能カード。第1弾のコンビカードを,2001年中に利用できるようにする。
一連の取り組みはビザ・インターナショナルが標榜している決済の将来像「u(ユニバーサル)コマース」を実現に向けたものだ。uコマースとは,あらゆる端末から,インターネットなどを介して,手段・場所・時間を問わずに,簡単かつ安全な決済を可能にすることである。