日本における高層ホテルの草分けである,京王プラザホテル(http://www.keioplaza.co.jp/)が,高速インタネーット・サービスの提供でも先行した。同ホテルは4月から,すべての客室から無料で,高速インターネット接続サービスを利用できるようにする。同様のサービスを実施しているホテルはほかにもあるが,無料で提供するのは国内では同ホテルが初めて。今回のサービス開始に伴う投資額は約3億円である。

 京王プラザホテルは,西新宿という立地から外国人のビジネス客が多く,高速のインターネット接続に対するニーズが高かった。「2000年の外国人商用客の数は,1999年に比べて13.1%増えた。宿泊客の外国人比率は52~53%に達している。また現在,客室でインターネットを利用する客は1日平均100人くらいだが,そのうち80%を外国人客が占めている」(福田優マーケティング部長)。

 客室から利用できるインターネット接続の通信速度は10Mビット/秒。既存の電話回線を利用する通信技術「xDSL」のなかで最も高速な「VDSL(ベリー・ハイ・ビット・レイト・デジタル・サブスクライバ・ライン)」という通信方式を採用した。センター側装置と端末側装置の距離が1.5km程度の構内回線向けの通信方式である。今回の通信設備はすべてNECが納める。

 ただし,10Mビット/秒というのは,客室に設置する「VDSLモデム」と,それらを集約する「VDSLコンセントレータ」の間,つまりホテル構内の通信速度である。実際にルーター経由でインターネット・プロバイダに接続する部分には,3Mビット/秒の光ファイバを使う。「1日の利用客が150人に増えても十分な回線容量を確保したつもりだ。プロバイダとの回線容量は,足りなくなればいつでも拡充できる」(福田部長)。

 利用客はノート・パソコンに加え,LANカードとLANケーブルを持参する必要がある。LANケーブルを使ってノート・パソコンにVDSLモデムを接続すれば,すぐにインターネットに接続できる。京王プラザホテルは,1450ある客室のうち,「エグゼクティブ・フロア」の260室すべてにVDSLモデムを据え付ける。それ以外の客室には,希望に応じてVDSLモデムを貸し出す。現在はベッド脇にしか電話回線のモジュラ・ジャックがない部屋もあるので,3月までに全室を改造し,机の近くにもモジュラ・ジャックを設ける。

中村 正弘=日経コンピュータ

(IT Pro注: [発表資料へ]

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