1月17日までの「www.itoyokado.co.jp」の画面 流通大手のイトーヨーカ堂は1月17日,「itoyokado.co.jp」というドメイン名の移転をJPドメイン名の紛争処理機関である工業所有権仲裁センターに対して申し立てた。紛争処理機関を利用して,企業がドメイン名を取り返そうと試みた事件は,イトーヨーカ堂で4件目になる。

 イトーヨーカ堂が訴えた「itoyokado.co.jp」の登録者は,銀河という株式会社。同社は「www.itoyokado.co.jp」上で,「SHOPPING PLAZA」という名称のWebサイトを開設し,ダイエーやジャスコ,西友,マイカル,伊勢丹などのWebサイトへリンクを貼っていた。加えて,「ITOYOKADO.CO.JP 上記ドメインお譲りします 詳細はMAILにて」などと,譲渡をほのめかす表記もあった。しかし,イトーヨーカ堂の申し立てを受けて銀河は,このWebサイトを18日未明に削除した模様。現在は,「Not Found」の表示が出るのみだ。

 紛争処理機関が扱う4件目の案件となったイトーヨーカ堂事件はこれまでの3件とは状況が異なり,「相手が悪意を持って不正にドメイン名を登録・使用」しているケースだと見られる。銀河が当該ドメイン名を利用したWebサイト上で正当な営業活動をしておらず,流通各社へのリンクと譲渡を臭わす表記があったためだ。ドメイン名の紛争処理機関は,商標権者などが悪意を持って不正にドメイン名を登録・使用している相手から容易にドメイン名を取り戻すための手段として,昨年10月からスタートした。しかし,これまで申し立てがあった3件は,いずれも,相手が明確に悪意を持っているとは言い難いケースだった。

 今回の申し立てについてイトーヨーカ堂は,「ご利用頂いているユーザーから,何で『itoyokado.co.jp』にアクセスすると他のWebサイトが出てくるのだ,という指摘が相次いでいた。このような状態は,当社としても,当社のユーザーとしても迷惑。これまでは,ドメイン名は早い者勝ちというルールがあったため静観していたが,紛争処理機関が発足したことで,移転の申し立てに踏み切った」としている。

井上 理=日経コンピュータ