特許庁は2001年1月10日の出願分から,メディア(記憶媒体)に格納されていない状態のソフトウエアに対して,特許を認めることにした。「伝送媒体特許」と呼ぶもので,ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)のように,インターネットを介してやり取りされるソフトウエアが増えてきたことに対応する措置である。

 日本の特許法は,「物(装置)」と「方式」を特許の対象として想定している。このため,,これまでソフトウエアは,フロッピ・ディスクやCD-ROMなどの記憶媒体に格納した状態でしか,特許の対象にならなかった(「媒体特許」と呼ぶ)。
すでに欧州や米国は,伝送媒体特許を認める方向にある。

 このほか特許庁は2000年12月28日以降の出願分から,ビジネスモデル特許向けの新審査基準を適用し始めている。新審査基準のポイントは,特許の重要な成立要件である「進歩性」の判断基準を明確にしたこと。ビジネスモデル特許の出願に対しては,「ビジネスと情報技術(IT)の双方に精通した専門家でも,容易に思いつかない発明」を「進歩性のある」と見なすことを明記した。ビジネスとしての進歩性と,ITとしての進歩性を,別個に判断することはしない。あくまでも両者が一体となった「発明全体」として,進歩性の有無を審査する。

 具体的には,「実社会で人間が実施している業務処理をシステム化した発明」や「一般に広く知られている(公知の)事象をシステムとして実装した発明」は,通常のシステム分析・設計の過程で一般的なこととして,特許の対象にしない。新審査基準は,こうした進歩性がない発明の例として,「注文受け付けを電話やファクシミリから,Webページに変更した発明」や,「電子商取引システムで申し込み撤回(クーリングオフ)機能を実現する発明」などを挙げている。

 今回の特許庁の新審査基準は,ビジネスモデル特許の範囲を比較的狭くとらえたものだ。単なるビジネス上のアイデアに対しても,特許を与えることが多い米国特許商標庁(USPTO)との間で,今後何らかの調整が必要になることは間違いないだろう。

星野 友彦=日経コンピュータ