NECでサーバー事業を統括する小林一彦執行役員常務が「Linuxサーバーが市場で注目を集めているが,アプリケーション・サーバーやデータベース・サーバーなど,現在はWindowsが利用されている分野には入ってこれない」との持論を展開した。NECはパソコン・サーバーを開発・販売するメーカーの中でもLinuxに最も力を入れている1社であるにもかかわらずだ。

 小林執行役員の発言は,12月11日夜に開かれた同社の年末懇親会の場で飛び出した。その理由として,小林執行役員は,Linux版ソフトの品ぞろえが進まないことを挙げる。「一口にLinuxと言っても,ディストリビューションはいくつもある。Linux版ソフトを開発した会社は,Red Hat Linux,TurboLinux,Miracle Linuxなど複数のディストリビューションを対象に,いちいち動作検証をしなければならず,負担は決して小さくない。一方,Windows 用ソフトならば,動作検証の手間は1回だ」。

 無償で入手できるLinuxを使えば低価格でシステムを構築できるメリットがあるが,これに対しても「システムの構築コスト全体から見れば,Windowsのライセンス料などわずかなものだ」と小林執行役員は指摘する。

 小林執行役員は,Linuxの活躍の場として,Windowsとは直接競合しない領域を想定している。「Linuxの良さが生きるのは,インターネット・サーバーなど,情報システムのフロントエンドにあたる用途。ここではシスコの通信機器が搭載するリアルタイムOSがライバル。オープンソースで,柔軟にカスタマイズができるLinuxが活躍する機会はいくらでもある」とみる。NECは2001年,Linux搭載パソコン・サーバーにWebサーバー・ソフトやファイアウォール・ソフトを組み込んだアプライアンス(用途特化型)サーバー事業にいっそう力を入れる方針だ。

森 永輔=日経コンピュータ