ソフトバンクが,ビルなどの建築主(発注者)と建設業者,設計事務所などをインターネットを使って結びつける「建設マーケットプレイス」の開設に動き出した。ソフトバンク・イーコマースは11月27日,オフィス・ビル大手の森ビルと提携し,2001年春に建設マーケットプレイス「CMnet(シーエムネット,http://www.cmnetcorp.com/)」を稼働させると発表した。

 CMnetは,ソフトバンク・グループが約40億円を出資した日本アリバ(http://www.ariba.co.jp/)のマーケットプレイス構築パッケージ「Ariba Marketplace」やサービス基盤を使って構築する。まずはCMnetで,「70兆円といわれる国内の建設市場の1~2%に当たる7000億円から1.4兆円の取引を目指す」(ソフトバンク・イーコマースの宮内謙社長)。

 ソフトバンクと森ビルは,CMnetを軌道に乗せるために,2001年1月に「CMnet運用協議会」を発足させる。CMnet運用協議会には,大学の有識者や建築主となる企業,大手ゼネコンなど約100社が参加する。森ビルのほか,東京電力や東京ガス,鹿島建設,清水建設,東芝,松下電工などが参加を予定している。

 協議会の副委員長を務める一橋大学の米倉誠一郎イノベーション研究センター長・教授は,「協議会を通じて,オープンで安全なマーケットプレイスを作るための実証実験を行う。日本の建設業界の構造改革を産学協同で推し進める」と説明する。米倉教授は,「協議会はソフトバンクと森ビルという欲の皮が突っ張った企業だけの集まりではない」と発言し,会場を沸かせた。

 CMnet運用協議会の重要テーマの一つには,「建設プロジェクトを支援するソフトの研究」が含まれている。ソフトバンク・イーコマースの宮内社長は「アリバ製品を前提に話を進めているわけではなく,半年前から建設マーケットプレイスの構築を考えてきた結果として,アリバ製品の採用を決めた」と説明する。ただし,ソフトバンクが参画する以上,アリバ製品を使ってマーケットプレイスを構築する計画は変わりようがない。

 ソフトバンク中心の今回のマーケットプレイスとは別に,CMnet運用協議会にも参加する鹿島建設や清水建設など建設大手5社が開設する建設マーケットプレイスがある。その運営会社である,コンストラクション・イーシー・ドットコムは,2000年12月から取引仲介サービスを開始するとしている。この運営会社には,アリバとマーケットプレイス構築で争う,日本オラクルとNTTデータが出資している。

 コンストラクション・イーシー・ドットコムのマーケットプレイスは,鹿島建設のような建設業者が建設資材を効率よく調達するためのサイト。建築主と建設業者を結ぶCMnetとは役割が異なる。ソフトバンク・イーコマースの宮内社長は,「(コンストラクション・イーシー・ドットコムと)話をしたわけではないが,将来的には互いのサイトがリンクし合うことになるのではないか。そのためのオープン・プラットフォームをCMnetは用意する」とした。一橋大学の米倉教授も,「協議会はオープンな組織。ぜひ,NTTデータにも参加してもらいたい」と語り,記者会見を締めくくった。(川又 英紀=日経コンピュータ

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