bol.comの田中社長 11月1日から米オンライン書店大手のアマゾン・ドットコム(http://www.amazon.co.jp/)が,国内でのサービスを開始した。これに対して,同じくオンライン書籍販売を手がけるビー・オー・エル・ジャパン(bol.com,http://www.jp.bol.com/)の田中功社長は「アマゾンは何かと話題になっている。日本市場に参入することは,オンライン書店ユーザーの絶対数を増やすことにつながるだろう。結果として,当社にとってはプラスに働く」という見方を示した。

 田中社長が「bol.comはアマゾンと競合する」という意識はほとんど持っていないのにはワケがある。実はbol.comは,ドイツの大手メディア「ベルテルスマン」の傘下にあることを生かして,音楽コンテンツのデータ配信ビジネスへの参入を検討しているのだ。事実,ベルテルスマンは10月31日,デジタル音楽の無料交換サービスを展開する米ナップスターと提携し,インターネット業界をアッと言わせたばかりだ。ナップスターは,ベルテルスマンから音源の提供を受け,会費制の音楽交換事業を始める。田中社長は,「bol.comは書籍やCDやDVDソフトの販売だけでなく,音楽コンテンツの有償配信を含めて総合的なメディア・ショップを目指している。その点,物品販売にとどまるアマゾンとは位置付けが異なる」とコメントする。

 とはいうものの,短期的には日本での知名度に勝るアマゾンの影響力は無視できないところ。アマゾンのサービス開始と同じ11月1日から年内一杯,bol.comが配送料を無料にしたのは,危機感の表れだろう。最近は,各種メディアを通じて,宣伝も積極的にしている。こうした取り組みもあって,bol.comの売り上げは順調に伸びている。「11月前半の売り上げを見る限り,アマゾンの影響は受けていない」と,田中社長はコメントする。

 オンライン書店は配送料の違いを比較されるケースが多い。しかし田中社長は「オンライン書店のサービス競争が本格化するのは,これから」と分析する。「配送料金は,電車で都市の大型書店まで往復するくらいの額に過ぎないことに,お客様が気づけば,配送料の違いは差異化のポイントにはならなくなる。そのときに備えて,サービスの拡充を急ぎたい。まずは注文を受けてから,24時間以内に商品を配達できるように努力したい」と,最後は自らに活を入れた。

坂口 裕一=日経コンピュータ