インターネット総合研究所,NEC,松下電器産業は11月中に,「ブロードバンド・エクスチェンジ(BBX)」と呼ぶ新会社を共同出資で設立する。BBXは,ADSL事業者やCATV事業者といったアクセス回線事業者と,動画や音楽などのコンテンツを提供する事業者の間を高速接続する新サービスをてがける。3社は,「BBXのようなインフラ・サービスができれば,ブロードバンド用のコンテンツ提供が活発になる」と期待を表明した。

 このところ,「ブロードバンド・サービスにより,IT革命が起きる」というベンダー側の合唱が続いている。ここで最大の問題はブロードバンドにいかなるコンテンツを流すかである。BBXの発表会で3社の幹部は,「ブロードバンド・コンテンツとして想定しているのは,映画や音楽などオン・デマンドものと,スポーツ中継といったリアルタイムで配信する動画コンテンツ」と説明した。

 しかし,これだけで既存のメディアを超える顧客を獲得できるかどうかは未知数だ。こうしたコンテンツを提供する会社がどれだけ出てくるかもまだわからない。これに対し,BBX側は,「動画を流すインフラがまだ不十分だから,いいコンテンツが出てこない。インフラを解決できれば新しいコンテンツが出てくるはず」と期待をかけている。

 BBXはコンテンツを抱えるインターネット・データセンターとアクセス回線事業者を,互いに高速ネットワーク回線で結ぶ。データセンターに蓄積されたコンテンツを,インターネットを介さず,アクセス回線事業者に直接流すことで,ユーザーはスムーズな動画や音楽を楽しめるようになるという理屈だ。

 インターネット総合研究所の藤原洋代表取締役は,「特にリアルタイムで配信するコンテンツはインターネット上の混雑の影響を受けやすい。BBXを介せば混雑を回避できる」と説明する。藤原氏はBBXの社長に就任予定で,NECと松下電器という看板を活用し,BBXという新事業に挑戦する。

 BBXに出資するNECと松下電器産業の狙いは明確である。NECは,BBXから各種の機器やシステム構築を請け負うことを期待している。BBXは,高速ネットワーク回線を管理するネットワーク・オペレーション・センターを全国各地に構築していく構想だからだ。

 一方,松下電器は,ブロードバンド・サービスが活況を呈すれば,同社の主力事業にしたい情報家電製品の需要増につながるとみている。松下電器もコンテンツ事業やネットワーク事業を手がけており,これらを強化する目論見もある。(高下 義弘=日経コンピュータ編集

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