米アマゾン・ドット・コムのはジェフ・ベゾス会長兼最高経営責任者(CEO)は1日午後1時から都内で行われた会見で,日経コンピュータの既報通り,「日本向けのWebサイトを開設し,洋書・和書の販売を本日から始める」と正式発表した。

 会見でベゾス会長は,「我々はすでに日本一のeコマース・サイトだ。日本市場において19万3000人の顧客を持ち,日本で年間3400万ドルを売り上げている」と豪語。「競合他社を追いかけるのではなく,徹底した顧客サービスにより日本一の座を維持していく」と宣言した。

 1日の午後立ち上がった日本向けWebサイトのURLはwww.amazon.co.jp。米アマゾンの日本法人であるアマゾンジャパン(東京都渋谷区)がサイトの運営,配送,サポート業務を担当する。今回開始する日本語による情報提供サービスと和書の販売でさらに売り上げを伸ばす考えだ。

 Webサイトのデータベースに入っているのは,和書が110万点,洋書が60万点。ただし,和書のデータベースには,書誌情報として入手困難の書籍も含めており,実際に販売できる和書は,60万~70万という。

 アマゾンジャパンは事業開始に伴い,書籍を保管したり,包装・配送作業を手がけるために,約5000坪の物流センターを千葉県市川市に設けた。ピッキング・システムやオペレーション・システムなどはアマゾンが提供し,実際のセンター・オペレーションは日本通運に委託する。

 2001年1月からは,北海道札幌市に開設するサポートセンターで,電話・FAX・電子メールによる24時間365日の顧客サポートを実施する。2001年1月までの間は,市川の物流センターでサポート業務を手がける。

 2年間の準備期間を経て,ようやく船出したアマゾンジャパンだが,オンライン書籍販売サービスが乱立する日本で成功するかはまだ未知数だ。再販制度がある日本では,米国のように本の価格で勝負することはできない。書評の充実や送料を無料にするといった施策で差別化するしかない。アマゾンジャパンは,日経コンピュータで報じた通り,1日からこの年末にかけて,送料無料キャンペーンを行う。

 ただし,Webによる書籍販売で先行するビー・オー・エル・ジャパン(東京都渋谷区)も1日,「11月1日から年末まで送料を無料にする」と発表し,奇しくもアマゾンジャパンに対抗する格好になった。偶然にも,アマゾンジャパンがこの9月に引っ越ししたオフィス・ビルにはビー・オー・エル・ジャパンがすでに入居している。両社は日本で同じビルに入居し,戦うことになる。

 ビー・オー・エル・ジャパンは,メディア大手の独ベルテルスマンの子会社と角川書店が設立した。独ベルテルスマンは米国最大の書店チェーンであるバーンズアンドノーブルと共同で,米バーンズアンドノーブル・ドットコムを運営しており,アマゾンの最大のライバルになっている。

 ベゾス会長は,「米国同様,CDやDVDなどのマルチメディア・コンテンツの販売も手がける」とコメントした。だが,開始時期は未定としている。日経コンピュータの調べでは,商品を調達するパートナ企業もまだ確定していない。

 アマゾンは創業以来,黒字になったことがなく,株価も低迷していることから,先行きを懸念する見方もある。会見後の立ち話でベゾス会長は,「当社は顧客サービスで世界一を極めたい。CDや玩具を売り出したのも,顧客からの要請にこたえたものだ。顧客に世界一の体験を与え続ける限り,将来に不安はない」と言明した。

井上 理=日経コンピュータ