データ・ウエアハウスの父,キンボール氏 「オンライン・ショップで顧客がクリックした履歴をたどれば,顧客がどの商品をどれだけ眺め,それを購入したか,買わずに棚に戻したかという一挙手一投足を把握できる。これは一般の店舗では絶対に入手できない,極めて価値の高い情報だ」。80年代後半にデータ・ウエアハウス(DWH)の提唱者の一人として,米レッドブリックの創立などに携わったラルフ・キンボール氏が,今後のDWHの方向について語った。

 キンボール氏は顧客のWeb上での一連の購買行動を「クリック・ストリーム」と呼ぶ。このデータをDWHに格納して分析するのだが,「購入だけでなく行動のすべてを記録するため,データ量が従来のDWHに比べて爆発的に増加する。そのため従来の10倍以上のパワーやテラバイト級の容量を持つディスクが必要になる」と予言する。数十万ドルの投資が必要になるが,米国ではAOLやアマゾン・ドット・コムがレッドブリックなどのデータベースを利用して,すでにデータ・ウェブ・ハウスを構築し,活用を始めているという。

 またデータ分析にはデータ・マイニングなどの専門知識を持った「アナリスト」が必要になる。「現在は企業でこのようなアナリストを育成しているが,人材不足の状態。いくつかの大学がアナリスト育成コースの設立を検討し始めた」(キンボール氏)という。DWHに関しては,特定の分析担当者だけが利用するのではなく,全社員が利用できるようにするため,使いやすいデータ検索・分析ツールを提供したり,レスポンスを改善するために小規模なデータ・マートを作るのがここ数年の動きだった。データ・ウエブハウスでは再び高いスキルを持った専門家が主導権を持つことになる。

 高額な投資や専門家の数の不足などの問題を解消するため,「現在コンサルティング会社などがデータ・ウエブハウスのASPサービスを提供し始めている」(キンボール氏)。ASP事業者が大容量のデータを蓄積し,ユーザーの要求に応じて検索・分析結果を提供するサービスである。しかし「他社とは異なるデータの戦略的な活用を目指し,4~5年先には社内でデータ・ウエブハウスを構築する企業が増える」とキンボール氏は見ている。

 キンボール氏は現在,コンサルティング会社のラルフ・キンボール・アソシエイツの代表を務め,データ・ウエブハウスに関する著書も出版している。近日日本でも訳書が出版される予定。

小林暢子=日経コンピュータ