ゲームソフト最大手のスクウェアが,米マイクロソフトが来秋に投入する家庭用ゲーム機「Xbox」のデベロッパーとして参入することが日経コンピュータの取材で明らかになった。すでにスクウェアは,これまで全世界で約3000万本も出荷した人気シリーズ「ファイナルファンタジー(FF)」のXbox版の開発に着手した模様。出荷すれば必ず数百万本は売れるFFだけに,スクウェアの新戦略がゲーム機市場を大きく揺るがすことは確実だ。

 スクウェアは,2001年春に発売予定のシリーズ第10作「FF X」をプレイステーション2(PS2)版で投入することを表明している。このため,11作目の「FF XI」からXbox版を出荷するものと見られる。FF XIの出荷時期は2001年夏の見込み。

 スクウェアはXbox版を開発するものの,PS2版から撤退するわけではない。FF XIについては,Xbox版とPS2版を同時に投入するものと見られる。同社は2001年春から開始する「Play Online」と呼ぶ新サービスに合わせて,ゲーム・ソフトのマルチ・プラットフォーム戦略をとっていくことを発表しているからだ。

 Play Onlineは,全世界のユーザー同士がネットワークに接続して様々なゲームを楽しめるオンラインゲーム機能を提供するほか,ゲームに関する各種の情報も提供する。FF XIは,Play Onlineに接続しなければゲームを進められない,完全なオンラインゲームになる予定。Xbox版あるいはPS2版のユーザーがPlay Onlineを介して対話することも可能になる。

 関係者の話を総合すると,スクウェアは今年夏頃にマイクロソフトから配布された開発キットをもとにFF XIの開発に着手している。ただし,マイクロソフトからXboxの仕様が完全に公開されていないことや,開発キットおよびマニュアルがすべて英語であることもあって,開発プロジェクトの立ち上がりでやや手こずっているという説もある。

 スクウェアがFFのXbox版を投入することについてマイクロソフトは,「今の段階では否定も肯定もできない。ただし,FFのようなキラー・コンテンツの獲得はマイクロソフトにとって最大の目標。スクウェアがXbox版への取り組みを発表してくれればこんなに嬉しいことはない」(Xbox事業部アドバンストテクノロジーグループの吉岡直人マネジャー)という。

 一方,スクウェアは,「Xboxへの参入に関して正式なコメントは一切出していない。FFのXbox版を出すかどうかについてもコメントできない」(広報)としている。(井上 理=日経コンピュータ