サン・マイクロシステムズ日本法人は,ワークステーション(WS)の新製品「Sun Blade1000」を11月下旬から出荷する。同社にとってワークステーションの新シリーズを出すのは5年ぶり。次期主力プロセサ「UltraSPARC III(US-III)」を同社製品として初めて搭載しただけでなく,システム・アーキテクチャも一新した。最近,UNIXワークステーションは,インテル・プロセサ搭載の「NTワークステーション」に押され気味だが,サンは新シリーズの投入を機に攻勢に転じたい考えだ。

 実は,新シリーズの一番手である「Sun Blade1000」には,NTワークステーション対抗のほかにも,二つの使命が課せられている。第1の使命は,64ビットOSの「Solaris8」上のアプリケーションを増やすこと。サンは今年3月にSolaris8を出荷したが,ユーザーの移行はまだそれほど進んでいない。ソフトウエア開発者が,完全に64ビット化されていないSolaris2.6以前のOSを使っているケースも少なくない。Solarisは「旧バージョンとの完全互換」を売り物にしているが,64ビット・プロセサUS-IIIの能力を生かし切るソフトウエアがなかなか増えない状況は,サンにとって好ましくない。

 そこでサンはSun Blade1000のOSとして,Solaris8しかサポートしないことにした。これにより同製品の潜在ユーザーであるソフトウエア開発者を,Solaris8に誘導する作戦だ。Sun Blade1000は最大8GBの主記憶を扱えるため,主記憶容量が最大2GBに制限されるSolaris2.6では力不足という事情もある。

 Sun Blade1000のもう一つの使命は,US-IIIの生産数量を増やし,同プロセサの価格競争力を増すことだ。ヒューレット・パッカードやコンパックコンピュータなどの競合メーカーが,自社開発プロセサと,インテルのIA-64の両天秤を掛けているのに対して,サンはUS-IIIに全勢力を傾けている。製造を他社(US-IIIの場合は,米テキサス・インスツルメンツ)に委託しているとはいえ,プロセサ関連の研究開発費の負担は決して軽くない。プロセサ開発費の負担は,プロセサ価格,ひいてはシステム価格に直結する。一歩間違えば,サンの稼ぎ頭であるハイエンド・サーバーの競争力にも影響しかねない。

 US-IIIの価格競争力を少しでも増すため,サンはSun Blade1000の価格を戦略的に引き下げ,とにかく出荷台数を増やすことにした。Sun Blade1000の価格は,512MBの主記憶と18GBのHDDを標準装備する構成で129万1000円。ほぼ同等の性能・仕様のHP製品の3分の1以下という。

 さらにサンは,より安価なSun Blade1000の下位機種の投入を近々予定している。詳細は不明だが,NTワークステーション並みの価格にする公算が大きい。サンは今後1年間で1万台のSun Bladeを国内で出荷する見込みである。
星野 友彦=日経コンピュータ