IBMは4日,「次世代eビジネスに向けての新しいITインフラ・ビジネスモデル」を日米で同時発表した。新しいビジネス・モデルは,需要の増大に応じて柔軟にITを利用できるようにするための,サービス,ソフト,ハードで構成している。具体的には,急な処理能力の増大に応じてハードを素早く増強できる「キャパシティー・アップグレード・オン・デマンド(CUoD)」と呼ぶサービス,利用量に応じてソフトの料金を決める「ワークロード使用料金方式」など。IBMが製品ではなく,ビジネス・モデルと銘打って発表したのは史上初めて。

 日本の記者会見に臨んだ,大歳卓麻日本アイ・ビー・エム社長は,「新しいテクノロジがインフラとなるまでだいたい50年かかる。ITもようやくその時が来た。ITを電気やガスといったインフラと同様に使えるようにするために,必要な機能をIBMとしてまとめた」と説明した。

 大歳社長はインフラの要件として,「いつでも必要な量を適正な価格で手に入れられる」,「だれでも簡単かつ安全に使える」,「どんな機器でもつなげて機能を発揮できる」を挙げた。これを具体化したものが,CUoDやワークロード使用料金方式」というわけだ。さらに,遠隔地からシステムの連続稼働を支援するサービス,アプリケーション・パッケージの動作を事前に検証してから一括出荷するソフトの提供方法も発表した。

 さらに今回の発表に伴って,IBMはすべてのサーバー・ハードのブランドを「e server」に統一した。eはIBMが意匠登録しているロゴを使う。メインフレームのS/390はe server zSeriesに,オフコンのAS/400はiSeriesに,UNIXサーバーのRS/6000はpSeriesに,パソコン・サーバーのNetfinityはxSeriesにそれぞれ変更した。

 ただし,発表会で大歳社長は,サービス,ソフトの順に説明し,サーバー・ブランドの説明は一番最後だった。もはや,「個別の製品がどうこういう時代ではない。インフラをどこまできちんと提供できるかどうかが重要」(大歳社長)という。

 IBMはかねてより,「サービス,ソフト,ハードすべてを持つ総合力で他社と差別化できる」と主張してきたが,総合力の実態が明確ではなかった。今回,「インフラのためのビジネス・モデル」という言い方で,総合力とは何かをユーザーに分かりやすく説明できるようになったと言える。
星野 友彦,森 永輔=日経コンピュータ