サンのマクニーリCEO

米サン・マイクロシステムズのスコット・マクニーリ会長兼CEO(最高経営責任者)が28日,記者会見に臨んだ。マクニーリCEOの来日は,昨年12月以来,9カ月ぶり。顧客訪問やパートナーとのミーティングのための来日である。

 インターネットの波を完全にとらえたサンの業績は現在絶好調である。「2000年6月期の売上高は,対前年比19%の伸びを予想をしていたが,実際は33%増だった。心配していたWindows2000やItaniumの影響はまったくなかった」(マクニーリCEO)という。直近の株価は120ドル弱と,マイクロソフトの2倍の値を付けている。

 こうしたこともあって,マクニーリCEOは終始機嫌良く質問に答えていた。ただし,回答の端々に,ライバルに対する辛辣なジョークを折り込むなど,“やんちゃ坊主ぶり”は健在だった。マクニーリCEOと日経コンピュータ記者との一問一答は以下の通り。

日経コンピュータ:サンのサーバーの問題で,NTTドコモの「iモード」に連続して障害が発生した。こうした問題をどうとらえている。

マクニーリCEO:可用性の向上は当社にとって,最優先課題である。当社はインターネットを電話のように使える環境「Webtone」の実現を目指しているが,当社製品の可用性は稼働率99.9999%を誇る電話交換機の水準には達していない。だが,このハードルを乗り越えれば,競合との差をさらに広げることができると確信している。

 そのために,様々な手を打っている。社内には,可用性の向上策を検討する14のチームがある。いずれも上級幹部に直接統括している。例えば,開発・製造段階を通じた製品の品質調査は,上級副社長の管轄だ。また,幹部社員は,担当分野で可用性をどのぐらい向上させたかによって,ボーナスの額を変えている。

 このほか,品質の向上運動「サンシグマ」を実施している。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の「シックスシグマ運動(本誌注:良品率を99.9999%以上を維持する統計学的な手法を駆使した品質管理手法)」に習ったプログラムだ。管理職には全員,サンシグマの研修を受けることを義務付けている。私もすでに3日間の研修を受講した。来月にあと2日間研修を受ければ,「サンシグマ」の資格を得ることができる。

日経コンピュータ:Linuxはサン・マイクロシステムズにとって脅威ではないか。

マクニーリCEO:当社にとって,Linuxはまったく脅威ではない。LinuxはOSとして収益を上げているわけではないからだ。サンも同様にOSではまったく収入を得ていない。

 それに,われわれはLinuxのリセラーでもある(本誌注:サンは9月19日,LinuxをOSとするアプライアンス・サーバーを開発・販売する米コバルト・ネットワークスの買収を発表した)。

 LinuxはUNIXの一種である。Linuxが普及すれば,UNIXのリーディング・サプライヤであるサンも自然に伸びていく。そうした意味で当社とLinuxは,「ヨットと風」の関係にある。サンというヨットは,Linuxの追い風に乗って,どんどん加速していく。

日経コンピュータ:市場でLinuxと直接競合する,インテル・プロセサ用Solarisは,今後どうなる。

マクニーリCEO:インテル・プロセサ用のSolarisの開発は今後も継続していく。最近,インテルはあまり当社の手助けをしたくないようだが,インテル・プロセサ用Solarisは独力でも開発できる(本誌注:サンとインテルは1998年にIA-64用Solarisの開発で戦略提携したが,今年に入ってサンはIA-64用Solarisの開発プロジェクトを縮小。これをインテル幹部が非難したことから,両社の関係は冷え切っている)。

 SPARC用Solarisの顧客ベースを拡大するうえで,インテル・プロセサ用は有効な手段である。インテル・プロセサ用はネットワークから無償でダウンロードできるが,ダウンロードしている人の多くは,現行のサン・ユーザーではない。こうした人がインテル・プロセサ用からSPARC用に移行していくことを期待している。

日経コンピュータ:米ヒューレット・パッカード(HP)が米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のコンサルティング部門の買収を進めていることを,どう評価する。

マクニーリCEO:HPの決断に拍手を送りたい。私も一口乗りたいぐらいだ。競合他社が一つの分野に事業戦略をフォーカスしないのは,当社にとって大歓迎である。

 HPは利益のほとんどをプリンタ事業とパソコン事業から得ている会社だ。PwCのコンサルティング部門を買収すれば,これにシステム・インテグレーション事業が加わる。このままいくと,HPはエンタープライズ向けのコンピュータ事業から撤退するのではないか。

日経コンピュータ:最近,サンはサーバーにフォーカスしているが,ワークステーション分野には力を注がないのか。

マクニーリCEO:エンジニアリング・ワークステーション分野から撤退することはない。ただし,今後高い成長を見込めるのは, 画面表示に特化したSun Rayのようなデスクトップである。アプリケーションをサーバー上で処理して,クライアントは結果だけを表示すればよい。“原子力発電所”が各家庭にある必要はない。

(聞き手は中村 建助,森 永輔=日経コンピュータ

BizTechでの関連記事へ