マイクロソフトのバルマーCEOと,富士通秋草社長 21日に開かれた米マイクロソフトと富士通の提携発表会のさなか,マイクロソフトのスティーブ・バルマー社長兼CEO(最高経営責任者)が富士通の秋草直之社長に,マイクロソフトのPDA(携帯情報端末)用OSである「Pocket PC」をアピールした。富士通はPDA戦略については沈黙を守っている。バルマーCEOの積極策により,富士通がPocket PCを採用する可能性が出てきた。

 21日の発表内容は,マイクロソフトと富士通が協力して,エンタープライズ・システムの領域にWindows2000を活用していこうというもの。記者会見の冒頭に,秋草社長とバルマーCEOがそれぞれ挨拶した。続いて富士通の杉田忠靖専務が提携内容の詳細な説明を始めた時,バルマーCEOが動いた。

 バルマーCEOはポケットからPDAを取り出すと,隣に座っていた秋草社長にそのPDAを見せながら話しかけた。さらに,入力用のペンを使って,PDAに手書き入力をしてみせ,あれこれと説明を始めた。秋草社長も笑顔を見せながら,バルマーCEOの持つPDAをのぞき込んみ,相づちをうっていた。

 記者会見の真っ最中に,経営トップ二人がPDAをはさんで談笑する光景は非常に新鮮だった。通常,記者会見の場に出てきた経営トップは挨拶を終えてしまうと,後は質疑応答の時間までは苦虫をかみつぶした表情でじっと待っているのが常だった。

 発表会が終了してから,日経コンピュータ記者がバルマーCEOに確認したところ,バルマーCEOの持っていたPDAは,コンパックコンピュータ製の「iPaq」であることが判明した。もちろん,OSはマイクロソフトのPocket PCである。

 うがった見方をすると,バルマーCEOは,富士通にPocketPCの採用を働きかけたのかもしれない。富士通はPDA戦略についてはなにも発表していない。日本ヒューレット・パッカードやカシオ計算機はPocket PC搭載機を,日本アイ・ビー・エムやソニーは米パームのPalmOSを採用したPDAをそれぞれ発表・出荷している。

 実は富士通はPDAについては10年近く前から手をうっていた。米国のベンチャー企業だった米ポケットに資本参加し,ポケット社の技術を使った小型ワープロ機を開発・販売した。しかし,ポケットはその後,倒産してしまった。

 奇しくも10年前にポケット社との交渉係をつとめていたのが,杉田専務だった。記者団に向けてプレゼンテーションしていた杉田専務から,エンタープライズ・システムではなく,PDAに熱中するトップ二人の姿が見えたかどうかは不明である。(谷島 宣之=日経コンピュータ

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