NTT-MEは9月19日から,インターネットを使った映画の配信サービスを開始する。映画史に残る貴重なフィルムを100本以上そろえ,利用者にストリーム配信する。これまでもインターネットで映画を配信するサービスはあったが,配信可能な映画の本数は非常に少なかった。そうした意味でNTT-MEのサービスは,“画期的”といえる。しかし,それと,NTT-MEのサービスがヒットするかどうかは別の話である。NTT-MEが用意した映画のほとんどは,半世紀以上前に制作された古典中の古典だからだ。社会の大多数が関心を持つ最新作は,まったく含まれていない。

 NTT-MEのサービスが配信するのは,初期のアニメーション映像やチャップリン作品など,配給会社「モーションプロ」が配給権を持つ作品群。いずれも「映画史から見て貴重な映像ばかり」(モーションプロの堀越英樹社長)とはいえ,とても一般受けするとは思えない。

 それでもNTT-MEは「月間400万円」(奥田英範第5マーケティング本部第3事業部担当課長)と強気の売り上げ目標を掲げている。このサービスにおける映画1本当たりの視聴料は100~300円。平均200円とすると,目標達成のためには,月2万本を配信する必要がある。サービスの主なターゲットは,NTT-MEの高速インターネット接続サービス「WAKWAK」(ホームページのURLはhttp://www.wakwak.com/)の会員など約2万人。他のプロバイダの利用者でも同料金で視聴できるが,月2万本はかなり高いハードルであることは間違いないだろう。

 NTT-MEは,配信する作品が古典だけになった理由として,「インターネット利用者の現状の通信事情を考慮した」(奥田担当課長)ことを挙げている。「無音声でシロクロ,映画のコマ数も少ない映画史初期の作品は,インターネット配信には最適」(奥田担当課長)と主張する。(川又 英紀=日経コンピュータ