外食大手のニユートーキヨーは今年10月、インターネットVPNとADSLを使った店舗ネットワークを構築した。これまで各店舗はISDN回線で東京の本社にアクセスしていた。新ネットワークでは全国約170店舗を接続。通信コストを従来の約半分にまで削減する。店舗には無線LANを導入し、どこにパソコンを置いても通信できるようにした。一部の店舗では、同じ無線LANを利用して来店客にインターネット接続サービスの提供も始めた。

 「全国の店舗を結ぶネットワークを刷新するのと同時に、通信コストを従来の半分程度に削減できた。さらには、店舗での無料インターネット接続サービスの基盤も整えられた」。ニユートーキヨーの湯澤一比古 財務部情報システム室長は、満足げにこう語る。

 ニユートーキヨーは、ビヤレストランの「ニユー・トーキヨー」や居酒屋の「庄屋」など、国内に数多くの飲食店を展開する外食大手。同社はこの10月、インターネットVPNとADSLを使った新しい店舗ネットワークを構築した。全国約170の店舗と東京・新宿の本社を結ぶものである。本社にはNTT東日本の光ファイバによる常時接続サービス「Bフレッツ」を導入。各店舗では複数の通信事業者のADSLサービスを利用するが、その多くはNTT東西地域会社の「フレッツ・ADSL」である。プロバイダには、インターネット接続サービス「BROBA」を提供するNTTブロードバンドイニシアティブを採用した。

 各店舗には無線LANのアクセス・ポイントを設置した。店長らは、無線LANカードを搭載するノート・パソコンから、インターネットVPNを使って本社のサーバーにアクセスする。これにより、発注や売り上げのデータを送ったり、店員の勤怠管理データを入力するなど各種の業務をこなす。

 一部の店舗では、来店客にも無線LANのアクセス・ポイントを開放。無線LANカードを備えたノート・パソコンを持ち込めば、店舗内からインターネットに無料でアクセスできるようにした。今年11月現在、東京・恵比寿の「ビヤステーション恵比寿」、目黒の中華料理店「五香路 アトレ目黒店」、竹橋の「ニユー・トーキヨー パレスサイドビル店」など数店舗でサービスを提供している。

写真2●店舗に設置した無線LANアクセス・ポイント(左)とADSLモデム(右)。東京・目黒の中華料理店「五香路 アトレ目黒店」に設置したもの

常時接続に切り替え、コストを削減

 ニユートーキヨーは新ネットワークの導入により、従来200万円程度かかっていた月額通信料金を約半分の100万円程度に削減できると見込んでいる。

 これまで各店舗からはISDNのダイヤルアップ回線で本社に接続していた。本社のサーバーにアクセスする時間は1日当たり20分から30分。長いときで1時間程度。比較的短い時間とはいえ、遠方の店舗もあるのでダイヤルアップ接続だと通信料金はかさむ。ニユートーキヨーの湯澤室長は、「常時接続回線に切り替えることによるコスト削減効果は大きい」と強調する。

 新ネットワークの構築作業は、富士通と、富士通系のインテグレータである都築電気が担当した。インターネットVPNは、本社に置いたシスコシステムズ製のVPN装置「VPN 3030」と、店舗のノート・パソコンにインストールしたVPNクライアント・ソフト(VPN 3030に付属)の間で実現する。

 各店舗の店長らは、ノート・パソコンからパスワード認証でVPN装置にログインする。ログインに成功すると、VPN装置はパソコンに対して本社内のLANへのアクセスを許可し、通信の暗号化を開始する。これにより、店舗のパソコンは本社の各種サーバーにアクセスできるようになる。VPNの経路を確保するための「トンネリング」には、L2TPと呼ぶプロトコルを使用している。

 無線LANのアクセス・ポイントと無線LANカードには、パソコン周辺機器大手のメルコの製品を採用した。伝送速度は最大11Mビット/秒。アクセス・ポイントはルーターの機能も備えるもの。今回のネットワーク構築に携わった都築電気の第二流通営業統括部営業部第一営業課の河野吉勇氏は、「メルコの無線LAN製品は安価で機能が豊富。しかもL2TPのパケットを通せるので選択した」と理由を語る。他社のルーターやアクセス・ポイントの中には、L2TPのパケットを通せない製品もあるという。

高下 義弘