米Airgo Networks社は2005年7月13日,データの送受信にアンテナを2本ずつ使う無線LANチップ「AGN102-G(True G)」および「AGN102-AG(True AG)」を発表した。チップは6月に出荷開始した。伝送速度は最大108Mビット/秒。それぞれIEEE 802.11g,11a/gと相互接続性を持つ。複数アンテナでデータを送受信する技術は「MIMO(Multiple Input Multiple Output)」と呼ばれ,現在策定中の高速化規格802.11nの目玉となる見込み。同社は既にアクセス・ポイントに2本,端末で3本のアンテナを搭載するチップを2003年8月から出荷している。今回,端末側のアンテナ数を2本に減らして低コスト化を図った。

 同社によると,チップのコストが下がったことで,搭載製品の店頭販売価格を20~25%引き下げられるという。コストを削減できた要因は大きく三つ。まずアンテナを1本減らすことで材料費が減ったこと。次に信号を処理する回路がアンテナ2本分で済むこと。三つ目が製造工程でテスト作業が減ったこと,である。

 端末側のアンテナが減ったことで,受信性能が低下し到達距離が短くなる。同社の計測によるとアクセス・ポイントから8.8m~40.5m離れた地点で,従来のチップの組み合わせよりも速度がおよそ30%程度低下するという。

 ただ本誌の計測では,従来チップの組み合わせで11a/gの約1.5~1.6倍程度の実効性能であり,本当に30%程度低下してしまうと11a/gに対する優位性がほとんどなくなってしまう。今回のチップがどの程度有効かは,製品が出た時点で検証が必要だ。

(堀内 かほり=日経バイト)