日立製作所は,脈拍や腕の動きを計測して結果を無線で送信する腕時計型端末を試作,2005年5月24日に発表した。3種のセンサー(脈拍,加速度,温度)と,無線通信用のアンテナ,電池を腕時計サイズの端末に実装した。パソコンやモバイル機器などと連携する。高齢者の健康状態を遠隔地で見守るサービスなどへの適用を想定している。3年後の実用化を目指す。

 東芝の「LifeMinder」など,同種の試作機は既に他社からも発表されていた。ただ「腕時計型端末にすべてを収められず,一部のセンサーを外付けにする場合が多い。またこれまでは,電池の寿命が1時間程度しかなかった。今回の端末は,小型化と省電力の面で他社に先行した」(日立製作所中央研究所センサネット戦略プロジェクトの山下春造主任研究員)。無線モジュールの回路設計を工夫し,部品点数を削減して体積を3.4ccに抑えた。また消費電力を抑えるため,省電力を特徴とするIEEE802.15.4を無線規格に採用した。さらに,待ち受け時に回路の電源をこまめに切ったり,脈拍センサーを改良して電力消費を抑えるといった工夫を加えた。脈拍を1時間に1回計測し続けた場合で,内蔵の電池で1ヶ月程度動作するという。

 同社はこの端末を,いわゆるセンサー・ネットワークの一部として動作させることを想定している。そこで今後,センサー・ネットワーク用の無線規格として有望視されているZigBeeにも対応する。今回の試作機に採用したIEEE802.15.4は,ZigBeeが物理層(PHY)とMAC層に採用しているものと同じ。「現時点ではネットワーク層から上位は独自プロトコルで実装したが,将来的にはネットワーク層以上にもZigBeeの規格を採用し,他のセンサーとも協調できるようにしたい」(山下氏)。

(八木 玲子=日経バイト)