組み込みシステム技術の標準化団体「TOPPERSプロジェクト」は2005年4月18日,マルチプロセッサ対応の組み込み向けリアルタイムOS「TOPPERS/FDMPカーネル」を開発したと発表した。マルチプロセッサおよびマルチコア化が進む情報家電や携帯電話での採用を見込む。対応するマイクロプロセッサは東芝のMeP,米Altera社のNios II,米Xilinx社のMicroBraze。同年5月27日にTOPPERSプロジェクトの会員向けの配布を開始。2005年内に一般公開する。今後は英ARM社のARMなど,ユーザーの要求が高いマイクロプロセッサへの対応を進める。

 組み込み機器の開発では,マルチプロセッサ・システムで動作するアプリケーションを開発する場面が増えてきている。その際「組み込み機器別にプロセッサ間の同期や通信機構を作り込む必要がある」(TOPPERSプロジェクト会長の名古屋大学大学院情報科学研究科の高田広章教授)。

 そこでTOPPERS/FDMPカーネルでは,組み込みOSの仕様として広く使われている「μITRON4.0スタンダードプロファイル」をベースに,非対称型のマルチプロセッサで動作するアプリケーション用のAPIを追加。具体的には,マイクロプロセッサ間の同期と通信をTOPPERS/FDMPカーネルのシステムコールで処理できるようにした。

 性能重視の観点から,TOPPERS/FDMPカーネルはあるプロセッサから別のプロセッサのデータを読み書きする際に,他のプロセッサに属するメモリーに直接アクセスするアーキテクチャを採用した。また,割り込みとタスク・スケジューリングをプロセッサごとに処理することで,排他制御による性能低下を抑えた。半面,アプリケーション開発者がプロセッサごとにタスクの遷移状態を把握する必要がある。「今後の課題は開発環境とデバッガの開発が課題」(高田教授)という。

(高橋 秀和=日経バイト)

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