2005年3月18日に総務省が開催した「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第3回会合において,2M~30MHzを使用する電力線通信の漏洩電磁波の許容値に新たな考え方が提案された。パソコンの電源ポートから通信路へ伝わる伝導妨害波の許容値を参考にするというものである。情報通信審議会CISPR委員会主査であり東北大学電気通信研究所教授の杉浦行氏が個人的な意見として発言した。同氏は本研究会の座長も務めていることから,今後の方向性を大きく左右しそうだ。

 電力線通信は,電力線を通信線に使用する有線の通信。漏洩電磁波が発生し他の通信を妨害することから,実用化の検討に当たって許容値が問題となっている。同じ周波数帯域を使用する他の通信を妨害するからだ。特に電力線の特性の一つである平衡度が低いと電力線を伝わる伝導妨害波の値が大きくなり,漏洩電磁波も強くなるという。

 今回,パソコンがノイズの許容値の参考として挙がったのは,どの家にもありそうなパソコンであれば家庭内の他の通信や機器との共存を考える参考になるという理由から。具体的な数値が提案されたわけではないが,VCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)の基準によれば,パソコン等の電源ポートでの伝導妨害波(電源ポートで生じる高周波電圧)は,5M~30MHz帯域で60dBμV。

 これまで許容値の案として,業界団体であるPLC-J(高速電力線通信推進協議会)は,免許不要の微弱無線局(トランシーバーやコードレス電話など)の許容値を参考にして,PLC設備から10m離れた場所で44dBμV/mという値を提案していた。この電界強度の場合,電源ポートにおける伝導妨害波がどのくらいの値になるかは明らかになっていないが,35dBμV/mの場合の通信ポートにおける伝導妨害波は5M~30MHz帯域で84dBμV。一概には比較できないが,44dBμV/mであれば伝導妨害波の値はもっと高くなる可能性が高い。

 ノイズの影響を受けやすい電波天文観測やアマチュア無線,およびPLC-Jの関係者からの発言は特になかった。ただメーカー側であるPLC-Jによると,自らが提案した基準より低いこの基準をクリアするのは難しいとのことだ。

(堀内 かほり=日経バイト)