NECは2005年3月16日,個人/家庭向けロボット「PaPeRo 2005」を発表した。雑音下での音声認識精度の向上や手書き文字認識機能を搭載し,人間とのコミュニケーション能力を高めた。またPaPeRo 2005をベースに,子どもとのコミュニケーションに重点を置いて開発した「チャイルドケアロボット PaPeRo」も同時に発表した。3月25日から開催される「愛・地球博」で来場者に公開し,実証実験を実施する。

 PaPeRoは,NECメディア情報研究所が1997年から開発を続けている。4代目となる今回はコミュニケーション機能の強化に力を入れた。まず,音声認識の精度向上。従来4個だったマイクを8個に増やして,精度を高める三つの工夫を盛り込んだ。一つ目が,ノイズ・キャンセラ。従来は静かな環境でしかPaPeRoに話しかけられなかったが,今回は家庭の中でテレビがついているような状況でも対話を可能にした。背面に用意されたマイクを使って周囲の雑音を推定し,得られた音の中から雑音だけを消去する。雑音環境下での音声認識の誤りを1/3程度に減らした。二つ目は,エコー・キャンセラ。PaPeRo自身が発した音を推定して消去する。これまではPaPeRoが話している間は人が話しかけることができなかったが,今回はPaPeRoの発話に割り込んで話すことができるようになった。三つ目は,音源方向検出。複数のマイクに音が到達する時間差から音の方向を推測し,話している人の方を向いて受け答えをする。

 もう一つの改良は,カメラを使ったコミュニケーション能力の向上。手書き文字認識機能を搭載し,漢字やひらがな,カタカナなどの文字を読み取れるようにした。例えばPaPeRoにユーザーを登録する際,文字で自分の名前を伝えられるようになった。また,人が手を振っている動作や振り子が揺れている動きを検出する機能も盛り込んだ。遠くから手を振ってPaPeRoを呼んだり,PaPeRoの目の前で5円玉を揺らして眠らせたりできる。これ以外に,複数のPaPeRoが無線LANで通信し合い,一緒にダンスをする機能も実装した。ハードウェアにはノートパソコンの部品を多く利用しており,CPUは動作周波数1.6GHzの「Pentium-M」,主記憶は512Mバイト,ハードディスク容量は40Gバイト。

 一方のチャイルドケアロボットは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて開発したもの。PaPeRo 2005をベースに,子どもを相手にするために必要となる強化を図った。例えば,顔認識。動きの激しい子どもの顔を正確に認識するために顔の角度を高精度に検出できるようにした。このため,ちょうど子どもが正面を向いている瞬間の画像をとらえて認識できる。また安全性向上のために超音波センサーや接触センサーを搭載した。人や障害物への衝突を防ぎ,万が一衝突しても即座に停止する。また携帯電話を内蔵しており,外出先から親が電話をかけて遠隔制御することも可能。電話があると子どもを探してカメラで撮影し,親はそれを携帯電話の液晶画面で確認できる。

 商品化の計画は現在のところ未定。「試作機なので1体当たり100~200万円ほどかかっているが,量産すれば価格は下がる。部品はノートパソコンとほとんど共通で,液晶ディスプレイなどPaPeRoには使わない部品もある。生産量がノートパソコン並みになれば,ノートパソコンと同等,またはそれ以下になる可能性もある」(NECメディア情報研究所の藤田善弘研究部長)。

(八木 玲子=日経バイト)