住友電気工業は2005年3月8日,2M~30MHz帯域を使い最大200Mビット/秒で通信できる電力線通信用のモデム(PLCモデム)を発表した。東京電力と共同開発した。機器をLANケーブルでPLCモデムに接続すると,壁の裏に張り巡らされている電力線を経由して他の機器と通信できる。同社は以前から最大200Mビット/秒のPLCモデムを公開していたが,VoIP(Voice over IP)やUSBの回路を除き,部品点数を減らすなどして従来より一回り小型化(幅12.5×奥行き12.5×高さ3cm)した。QoS(Quality of Service)機能や特定の周波数帯域をカットする機能を備える。

 電力線通信は屋外の電力線を使う方式(アクセス系)と,アクセスラインはFTTHやADSLに任せ,屋内の通信線として電力線を使う方式(宅内系)がある。このPLCモデムは屋内用。変調方式にはOFDM(直交波周波数分割多重)を用いる。

 現在日本では,電力線通信が使用できる周波数帯域は10k~450kHzで低速な制御用途で用いられている。高速化のために使用する周波数帯域を拡大すると,電力線からの漏洩電磁波が同じ周波数帯域を使う他の通信技術を妨害することから,総務省の研究会で周波数拡大の可否や使用条件を検討している。今回発表されたPLCモデムが国内で使えるかどうかは,今後の議論の結果次第だ。

 また,2M~30MHz帯域を使えるようになったとしても,漏洩電磁波の許容値などの関係から特定の周波数帯域は使用できなくなる可能性があるため,実効速度は不明である。ちなみに最大200Mビット/秒という数値は2M~30MHzをフルに使った場合の理論値。例えばアマチュア無線通信で使用する帯域を除いたとすると,150Mビット/秒を下回るという。また,電力線の配線状態によって実効速度は大きく変化する。家屋の配線はかなり複雑だが,「HDTV(high definition TV)の映像を1本流せる程度(約25Mビット/秒)の速度は実現できるのではないか」(住友電気工業)という。

(堀内 かほり=日経バイト)