IDF 2003 Springの最終日の基調講演は,Research&Developmentをテーマとして,Senior Fellow and Director,Corporate Technology GroupのJustin Rattner氏(写真上)が将来のコンピューティング環境について語った。Rattner氏は「パソコンの性能はもう十分という声はよくあるが,より自然でより生活の質を高めるにはまだまだ性能の向上が必要である」と主張。そして10年後である,2015年において求められるプラットフォームの姿を「Platform 2015」と呼んで説明した(写真中)。

 Platform 2015において求められる要素を示したうち,特に詳細に説明したのがParallel Processingである。2015年にはマルチコアではなく,「Many-Core」になる。ハードウェアでこれを実現するのはロードマップに乗っているが,では肝心のプログラムはどうだろうか。つまり「プログラム可能か」と問うたのである。その回答として,まず現在のHigh Performance Computing(HPC)の成果を挙げる。HPCでは数千台規模の並列処理を実現している。そのノウハウを用いればプログラム可能だという。ただしHPCのプログラミングは実際には非常に難しい。

 そこで提案するのが「Domain-Specific Parallel Programming」である(写真下)。特定のドメインに特化した言語を使って,並列処理のプログラムを記述する。それを「Parallel Compiler」がスレッド単位のプログラムに置き換えるというのだ。ドメイン特化の言語の例としては,グラフィックス記述言語を挙げていた。

 またたくさんのコアによって並列処理を効率よく実施するには,メモリーの帯域が問題となる。そこで挙げたのがメモリーをCPUに実装してしまう方法だ。具体的には「Wafer Stacking」と「Die Stacking」という2種類の方法が考えられるという。現段階ではどちらも得失があるため,採用する方法は決まっていない。またチップ間の伝送速度を高める意味で光配線,しかもシリコン・フォトニクスが重要だと語った。Intelはシリコンを使った半導体レーザーの連続発振に成功しており,この成果が非常に意義があるという。

(北郷 達郎=日経バイト)