NTTは2005年2月18日,人体を伝送路に使って最大10Mビット/秒で通信する技術の小型端末を発表した。人体通信技術の名称は「RedTacton(レッドタクトン)」。2004年10月に開催されたIT関連技術の総合展示会「CEATEC JAPAN 2004」で技術自体は発表済み。実用化に向けて最大の課題が端末の小型化だった。今回,PCカードに実装できるまで小型化した。今後企業や団体とともに実用化に向けて実証実験を進める予定である。2006年中の製品化を目指す。

 例えば薬びんに送信機となるRedTactonデバイスを埋め込み,受信機をPDAに組み込んでおく。そのPDAを持ったユーザーが薬びんに触ると,人体を通じて通信が確立し,薬の情報をPDAで表示できる。通信には人体や物の周りで発生する電界を利用する。送信機のRedTactonデバイスで人体に対して電圧をかけると,人体の中で電荷が移動する。人が受信機を手にしていればその移動によって電界の変化を取得できる。受信は,EO(Electric Optical)結晶による光学式電界センサーを使う。EO結晶に信号を通すと結晶の性質が変化して屈折率が変わる。この屈折率の変化をフォト・ダイオードで受信して電気信号に変換する。

 電荷の変化は誘電体でも発生するので,服や靴が介在しても通信できる。つまり,人が受信機を持たずにポケットに入れておいても通信できる。このとき人体の周りに発生する電界は微弱で,数十ミリV/m程度。これは,送電線直下の電界よりも5桁ほど小さい値だという。NTTはRedTactonの応用例として,広告に触って情報を取得するものやプリンタに触ると印刷ができるシステム,握手をすれば端末間で名前や所属などの情報が交換できることなどを考えている。また,将来的には携帯電話に搭載して情報を送受信することも可能だという。

(堀内 かほり=日経バイト)