総務省は2005年1月25日,2M~30MHz帯域を利用する電力線通信(PLC:Power Line Communications)の実用化を検討する「高速電力線搬送通信に関する研究会」を開催すると発表した。1月31日に第1回会合を開催し,10月頃に結論を出す予定である。

 日本ではPLCに10k~450kHz帯域が割り当てられているが,通信速度が9600ビット/秒程度と低速である。周波数帯域を拡張すると高速化が可能。2M~30MHz帯を使った最大200Mビット/秒のチップは既に開発されている。ただし,電力線から漏洩する電磁波が同じ周波数帯域を使う他の通信を妨害するため,影響を受ける無線通信の利用者から反対の声があがっている。2002年にも研究会で検討したが漏洩電磁波のレベルが高すぎるため実用化は見送られた。

 総務省は漏洩電磁波の低減を目的とした実証実験を2004年1月から許可。電力会社やモデムメーカーは同年3月ころから実験を進めていた。同年12月24日に業界団体であるPLC-J(高速電力線通信推進協議会)は,モデムを中心に漏洩電磁波の低減を裏付けるデータが揃ったことから,総務省にデータを提出し研究会の設置を要望していた。

 研究会では,PLC機器や電力線が満たすべきノイズレベルの基準値をどの程度にするかが焦点になる。具体的には,漏洩電磁波の低減技術を確認し,そのレベルで生じる他の無線通信への影響を調べる。そして,PLCと他の無線通信が共存できる条件を検討する。このほか,他の無線通信がPLCに与える影響や,他のコンセントにつないだ電子・家電機器間で与えあう影響について議論する。

 2002年の研究会のメンバーは主に学識経験者だったが,今回の研究会の構成メンバーには実証実験を行ったメーカー,PLCによって通信を妨害される側(航空・船舶無線や電波天文観測,短波ラジオ,アマチュア無線など),国際的な規格にかかわる情報通信審議会CISPR委員会の代表者らが集まった。

(堀内 かほり=日経バイト)