Bill Gates氏

 「64ビット・コンピューティングはワークステーションやデスクトップの上位機種,およびサーバーで急速に普及するはず。64ビット・サーバーはこの2~3年で当たり前になる」--。2004年5月4~7日に米Microsoft社がワシントン州シアトルで開催中のハードウェア開発者向け会議「WinHEC 2004」。その初日の基調講演において,同社会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクトのWilliam H. Gates氏が強調したのは「64ビット・コンピューティングがWindowsのパフォーマンス向上において立役者となる」との見通しだった。今後は「アンチウイルス・ソフトを含むデバイス・ドライバの64ビット対応状況が普及の鍵になる」とし,会場を埋める開発者達に向けてデバイス・ドライバを64ビット版Windowsに対応させる意義を訴えた。

 Gates氏の基調講演は「シームレス・コンピューティング」と題したものだったが,シームレス・コンピューティング構想自体は,2003年11月の「COMDEX Las Vegas 2003」や2004年1月の「2004 International CES」で披露したのとほぼ同じ。エンドユーザーが扱うソフトウェアやハードウェアが自動的に相互接続できる環境を提供することでユーザーの使い勝手を改善するという構想だ。今回の基調講演では,無線LANネットワークやUSBの無線化などでユーザーをケーブルから解放するという点が強調されたが,目新しさに欠けた内容だった。

 多くの時間を割いたのは,64ビット・コンピューティングのデモンストレーション。まずカリフォルニア工科大学のHarvey Newman氏が率いるグリッド・コンピューティング・プロジェクトを紹介。Newman氏は64ビットCPU搭載のPCサーバーを10Gビット・イーサネットと組み合わせることで「四つの実験で約300テラバイト/秒のデータが生成される」高エネルギー物理学の実験データを「32ビットCPUでは毎秒4Gビットが上限だったが,64CPUで毎秒1Gバイト処理できる」という。Gates氏はこのプロジェクトの成果を「長年の夢だった。ハイエンド・コンピューティングとパソコンは別物だと思われていたからだ」と評価。続いて独シュツットガルト大学の「High Performance Computing Center Stuttgart」の研究成果として,水車に流れる水を流体力学に沿った3次元グラフィックスを立体画像としてリアルタイムに描画するデモを披露して講演を締めくくった。

(高橋 秀和=日経バイト)

米Microsoft社