日本出版インフラセンターは3月18日,UHF帯無線ICタグの実証実験を3月22日から開始すると発表した。実証実験は,三省堂書店の店舗「自遊時間」(東京都・千代田区)と,書籍卸事業者の昭和図書の越谷物流センター(埼玉県越谷市)の2カ所で実施する。それに先駆けて,三省堂の店舗において無線ICタグの読み取り精度などを調べる実験を公開した(写真)。コミックスやビジネス書などに無線ICタグを挟み込み,据え置き型のリーダーなどで読み取れるかどうかを確かめた。

 実験で利用するUHF帯(950M~956MHz)は,今のところ無線ICタグでは利用できない。電波法の省令の改正により2005年3月にも利用可能になる見込みである。このため実証実験のための免許を総務省に申請し,3月22日から実験を始める許可を得た。実証実験では,既存の13.56MHz帯の無線ICタグも利用し,両者の性能を比較する。本日公開した実験でも13.56MHz帯の無線ICタグを利用していた。

 3月22日からの実験で調べるのは,読み取り距離や同時読み取り枚数,タグの傾きや水分・金属などの影響による読み取り精度の変化といった基本的な性能である。一般には販売しない書籍に無線ICタグを取り付け,実証実験の担当者が読み取り精度などを調べる。原則として一般の消費者は実験に関与しない。ただし実験は現実的な利用場面を想定したものだ。例えば三省堂書店の店舗は神田の繁華街にあり,「前を通るタクシーの無線通信や顧客の携帯電話,店舗内の無線LANなど,さまざまな電波のノイズがある。そういった実際の現場でちゃんと読めることを検証したい」(三省堂書店情報システム室室長の児玉 好史氏)という。

 書籍業界は,13.56MHz帯よりもUHF帯の無線ICタグに期待を寄せている。13.56MHzの無線ICタグは通信距離が最高70cm程度であるのに対し,UHF帯は最高2~5m程度と長くなるからだ。特に期待しているのが万引きの防止。書店の出入り口などに万引き防止ゲートを設置し,万引きを抑止したい。しかし大型店では出入り口の幅が広く70cm程度の通信距離では不十分である。例えば今回の三省堂の店舗では出入り口の幅は約4m。出入り口の両側にゲート側リーダーを設置するとしても,最低2mの通信距離が必要になる。

 日本出版インフラセンターは,2004年4月末まで実験を続ける予定である。UHF帯を使った実証実験は,このほか家電業界,アパレル業界,食品流通業界,航空業界(航空手荷物)などで現在進められている。

(安東 一真=日経バイト,RFIDテクノロジ)