三洋電機は2004年3月11日,液晶ディスプレイの消費電力を約55%に低減する液晶駆動技術「SmartDIDM(Smart Dot Inversion Method)」を発表した。携帯電話やデジタルカメラ,PDA(携帯情報端末)向けの小型低音ポリシリコンTFT液晶に実装し,2005年第1四半期の量産開始を目指す。

 液晶ディスプレイでは,液晶にかける電圧を1画素ごとに制御する。このとき液晶材料の劣化を防ぐため,一定周期で電圧の極性を反転させている。これを反転駆動という。反転駆動方式には現在,ライン反転駆動方式とドット反転駆動という二つの方式がある。

 ライン反転駆動方式は低い電圧で反転させられる半面,横に同じ極性の画素が並ぶためフリッカーノイズ(画面のちらつき)が出やすく,反転周期を下げられない。一方,ドット反転駆動方式は極性の異なる画素が横に並ぶためフリッカーノイズに強く,反転周期を下げることができるものの,高い駆動電圧が必要である。いずれの方式でも低消費電力化には限界があった。

 SmartDIDMでは,ドット反転駆動方式と同様に異なる極性の画素を配列すると同時に,パネル内の回路に改良を加え,低電圧での反転駆動を実現した。これにより,通常のライン反転駆動方式では60Hzで反転させている周期を,画質を維持したまま30Hzまで落とせるようになった。30Hzで駆動させる場合,消費電力を従来の約55%に抑えられる。SmartDIDMを盛り込んだ液晶ディスプレイを採用した場合,待ち受けや静止画表示には反転周期を30Hzに落とし,高フレームレートの動画再生では60Hzで動作させるといった使い方も可能になる。

(仙石 誠=日経バイト)

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