2004年2月12日,NTTは1Gバイトのデータを記録できる切手サイズの光メモリー(ROM)「インフォ・マイカ(Info-MICA)」のプロトタイプを発表した。今回発表したプロトタイプは,ドライブが縦88×横37×厚み22mm,メディアが縦25×横25×厚み2mmと小型なのが特徴。2005年中の製品化を目指しており,価格は量産時でドライブが数千円,メディアが100~200円になると予測している。

 インフォ・マイカは薄膜ホログラム記録という方法でデータを記録・再生する。記録は,まずデジタル・データを二次元の情報を表す凹凸パターンになるようにソフトウェアで計算する。その凹凸を,CD-ROMやDVD-ROMを製造するときのようにマスターをつくりメディアに転写する。再生時は,レンズを通してレーザー光を照射する。レーザー光が記録面に当たると,記録してある凹凸のパターンによって光が散乱する。その反射光をCMOSセンサーに結像してデータを読み出す。  デモで動かしたドライブには,200万画素のCMOSセンサーを内蔵していた。再生するレーザーには波長が660nmの赤色半導体レーザーを使い,記録媒体は100層(1Gバイト)から成るプラスチック材料である。

 ホログラム記録には,波長の異なる2種類のレーザーを使い,レーザー光の干渉パターンによってホログラムを記録する体積記録という原理もある。体積記録だと記録密度を高めることができ,テラ・バイト級の記録メディアとして開発が進んでいる。ただし,体積記録は記録装置が大きくなってしまう。

 NTTでは,数十Gバイトくらいの容量で小型なメディア開発を目指して,薄膜ホログラム記録に取り組んだ。研究に当たって壁となったのは記録した内容をうまく分離して再生できないこと。これまでの研究では,多重記録はできるが再生するための参照光を当てるとホログラムが分離されず読み取れなかった。NTTはこの問題を解決するために次の2点を改善した。

 まず,光ファイバのようにクラッド層とコア層を作って光を閉じ込める導波路構造を採用した。各層に記録したデータを選択して再生できるようになった。

 次に,開口多重という技術を使って選択した画像のみをCMOSセンサーに結像できるようにした。開口多重では,ある層に複数のデータを多重して記録した場合に,多重されたデータの一つはフィルタのある一部分のみを通ってCMOSセンサーに結像する。フィルタには液晶を使っている。液晶分子は電圧のオン・オフによって配向を変えてシャッターの役割を果たす。

 インフォ・マイカの用途としては,メディアの価格が安く,しかもプラスチック製なのでリサイクルできることから半導体ROMの置き換え用途や使い捨ての配布用メディアなどを有望視しているという。メディアにはカートリッジがついていないが,指でそのまま触っても読み取りに支障がないなど取り扱いも楽である。たとえば,雑誌に貼り付けたり,チケットの代わりに使うことができる。ホログラムのマスターを偽造するのは難しく物理的なコピーができないことからコンテンツを保護できるという特徴もある。また,ドライブは回転用のモーター機構がいらないため小型かつ低消費電力にできる。このため,携帯電話などの小型機器にも向くという。

(堀内 かほり=日経バイト)