「IPセントレックスを検討している企業ユーザーの方から,“転送できないって聞いたんですが?”との問い合わせを受けることがある。ベンダーから聞いたというが,そんなことは全くない。“風説の流布”はやめてほしい」――2月4日午後,「NET&COM 2004」の「ネットワーク運用と構築」カンファレンスで講演した東京ガス情報通信部ITインフラ・マネジメントグループ主幹の森 忠宏氏は,東京ガスが構築中のIPセントレックスを用いた次世代ネットワークについて,これまでPBXで使っていた機能はどれも問題なく使えていることをアピールした。加えて「重要なことは,24時間365日の保守体制を整えられたこと。自前のPBXで24時間保守を実現しようとすれば,コストがいくらかかるか分からない」(森氏)と保守運用面で大きなメリットがあることを紹介した。

 東京ガスの次世代ネットワークは,年間の運用コストを約10億円から約5億円と大幅削減することが評判となり,その削減コストの大きさが話題を呼んでいる。だが,森氏はコスト削減だけを考えて設計したのではないという。「拠点に引き込む回線の速度を大幅に高速化して,エンドユーザーのネットワーク環境を大幅に強化した。回線速度は大規模拠点で100Mビット/秒,中小規模の拠点で10Mビット/秒。これは以前のネットワーク構成に比べて20~40倍も速い」(森氏)

 講演の終わりには,「IPセントレックスの導入を検討したいが,トラブル対策などの面で上司がなかなか理解をしてしてくれない。どう説得したらいいか」との質問がユーザー企業のシステム担当者から飛んだ。これに対し森氏は,「論理的に説明していくことが重要。本当に必要なものなのか,どれくらいの頻度で使うことになるのか,それにかかる費用に見合うものなのか--などを精査していくと,問題点がはっきりしてくる。ただしその前提として,インテグレータ同様,“やり通すまでは絶対に逃げない”という心構えがシステム担当者にも必要だ」と回答。新技術の導入では,システム部門に強い意志が求められることを強調した。

(日経バイト)