ボーランドは2004年1月28日,Pascal言語に基づく開発ツール「Delphi 8 for the Microsoft .NET Framework」を発売した。これまでWindowsプラットフォームの標準APIである「Win32」向けのビジュアルな開発ツールとして,Delphiは確固たる地位を築いてきた。そのDelphiのコード資産や,プログラマのノウハウを.NET Frameworkベースの開発に継承できるようにする。

 特徴は「VCL for .NET」。Delphiのコンポーネント・ライブラリは「VCL(Visual Component Library)」という独自のもので,Delphiユーザーはこれを利用してアプリケーションを構築してきた。いわば,Win32のAPIをVCLで隠していたわけだ。VCL for .NETはその.NET Framework版である。.NET Frameworkでは利用できないポインタやバリアントといったデータ型を利用したものは無理だが,ほとんどのコンポーネントは再現している。「Win32向けのプロジェクトをそのまま再構築するだけで.NET対応になる。日本法人の技術者が驚くほど互換性が高い」(プロフェッショナルサービス本部Product Marketing Planningプロダクトマネージャーの新井正広氏)。.NET Frameworkが標準で提供するWindows Formsを利用したアプリケーションの構築も可能。ただしフォームのコンポーネント管理の方法が違うので,プロジェクトを作成した時点で利用するコンポーネント・パレットが切り替わる。これはDelphi/Kylixで導入したコンポーネント・ライブラリ「CLX(Component Library for Crossplatform)」と同じ形だ。ユーザー・インタフェースの構成は,これまでのDelphiよりも同社の「C#Builder」やマイクロソフトの「Visual Studio .NET」に似ている。

 製品は3種類。Architect版,Enterprise版,Professional版とある。Professional版は標準の開発環境であり,ASP .NETによるWebアプリケーションの開発なども可能。価格は6万8000円。Enterprise版は,Professional版にデータベース開発に利用可能な「Borland Data Provider」を加えたもの。価格は価格は30万円。Architect版はさらにUML(Unified Modeling Language)を使ったモデルベースの開発が可能。価格は36万円。なおDelphi 7までにあった低価格のエントリ版(Personal版)を提供する予定は現時点ではないという。

(北郷 達郎=日経バイト編集)