東芝とNECがDVD Forumに共同提案している「HD DVD」(開発時の名称はAOD)が次世代DVDの規格として採用されることがほぼ確実になった。2003年11月18日,DVD Forumの幹事会であるSteering CommitteeでHD DVDのROM(読み出し専用ディスク)の最終仕様案(version0.9)が承認されたためだ。今後各社が試作品を検証した後に正式な規格(version1.0)として承認される見込みである。

 HD DVDはDVDの約5倍の容量である20Gバイトほどを記録できる。これは,青紫色レーザーを使って,ピット(データを記録するために刻むくぼみ)を小さくすることで実現する。DVDと同じく0.6mmの基板を張り合わせた構造をしており,DVDの製造ラインを流用できるためコストを抑えられる。

 規格を提案した東芝によると「2月には最終的な規格としてversion1.0が承認される見込み。ただし,これはディスクの物理フォーマットのみの仕様である。コーデックなどの論理フォーマットについての議論は2004年になる。このため製品を2004年中に出すのは難しい」という。

 次世代光ディスクの規格としては,業界団体が独自に策定した「Blu-ray Disc」がある。ソニーは2003年4月にプレーヤとディスクを出荷開始した。Blu-ray Discは,ソニーや松下電器産業などの10社によるBlu-ray Disc Foundersがライセンスを行っている。この10社は,17社で構成するDVD ForumのSteering Committeeメンバーでもある。

 Blu-ray DiscはDVD規格を決めるDVD Forumで作られたものではないため次世代DVDという名称は使えない。その一方でDVD Forumは,次世代光ディスクとして先行したBlu-ray Discに遅れをとらないよう,東芝・NECが提案したHD DVD方式を規格化しようとしていたが,2度否決されていた。

 今回承認されたのはHD DVDのROMの規格のみで,一緒に提案していた書き換え型の方は承認されなかった。ROMについては,米国のハリウッドなどコンテンツを扱う方面から期待が大きかった。「Blu-ray Disc Foundersの中にもROMならHD DVDに魅力を感じるメーカーがいた」(あるディスク・メーカー)ために承認されたとの見方がある。また,DVD Forumでの議決のルールが変わったことも影響しているようだ。DVD Forum事務局によると「Steering Committeeの中にBlu-ray Disc Foundersのメンバーがいることだけでなく,決議の際に“保留”が続出してなかなかスムーズに物事が決まらなかったためルールを変えた。これまでは“保留”を“反対”として数えていたが,それをやめて保留は数に入れないことにした」という。

(堀内 かほり=日経バイト)