FreeBit OfficeOne IPビジネスホンフリービットは2003年10月21日,中小事業者向けのIPセントレックス・サービス「FreeBit OfficeOne IPビジネスホン」を2003年12月に開始すると発表した。このサービスの最大の特徴はIPv6を採用した点である。

 IPv6でのネットワークは現状ではほとんど普及していない。これは契約者側のLANと,接続事業者との間のアクセス回線のどちらにも当てはまる。今回のサービスではアクセス回線にNTT東西が提供するBフレッツを指定しているが,BフレッツはIPv4の回線である。このため,契約者が導入したIPv6のIP電話機はそのままではBフレッツ回線を通じて外部のネットワークにアクセスできない。そこでフリービットでは,独自に開発したトンネル技術を用いることにより,IPv6でのサービス提供を可能にした。IPv6パケットをIPv4パケットのデータ部に格納することにより,IPv4ネットワーク上でIPv6パケットを送受信できる。

 フリービットでは2003年3月から9月まで,「Feel6 Farm」というIPv6実証実験を行っていた。これはIPv4による接続環境の中でIPv6環境を実現する実験である。今回のサービスでは,この実験で用いていた同社独自のトンネル技術「Feel6 Technology」を用いる。

 こうしたことから,契約者側のルーターはFeel6 Technologyに対応している必要がある。そこで今回のサービスでは,Feel6 Technologyを備えるヤマハのVoIPゲートウェイ「RTV700」の導入も指定した。RTV700を利用することで,契約者側のネットワークはIPv6とIPv4を同時に使えるデュアル・スタック環境になる。

 FreeBit OfficeOne IPビジネスホンは発呼制御にSIP(Session Initiation Protocol)を使う。SIPサーバーはフリービットが管理する。SIPサーバーと一般公衆回線との接続は,フリービットが用意するメディア・ゲートウェイが実行する。これにより,契約者側のIP電話機と一般公衆回線の電話機との間で通話が可能になる。

 このサービスではIPv6やSIPに対応した専用のIP電話機を用いる。この電話機は岩崎通信機と共同開発した。IP電話としての電話番号は「050」で始まるIP電話専用の番号が割り当てられる。ただし,RTV700はISDNポートを備えているので,電話回線からの呼び出しをLAN上のIP電話機に着信させる機能を使うこともできる。

 フリービットではFreeBit OfficeOne IPビジネスホンの対象を30人程度以下の中小規模の事業所としている。「PBX(構内交換機)のリプレースを既存のIPセントレックスでやろうとすると,専用線の引き込みなど大規模な初期投資が必要となるため,中小企業には導入が難しかった。IPv6を用いることにより,NAT(Network Address Translation)をどう越えて通信するかというIP電話のハードルをクリアできる。これにより,初期投資やランニング・コストを抑えることができ,メンテナンスも容易になる」(フリービット 社長の石田宏樹氏)という。

(仙石 誠=日経バイト)

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