米Transmeta社は2003年10月15日,同社のx86互換省電力CPU「Crusoe」の後継CPU「Efficeon TM8000」を発表した。2003年第4四半期に出荷開始する。2次キャッシュが1Mバイトの「TM8600」,同512Kバイトの「TM8300」,同1Mバイトでパッケージを小型化した「TM8620」の3製品ある。動作周波数は1.0G~1.3GHz。Intel社のPentium Mシリーズに対抗できる性能と実装面積の小ささから,1kg以下の薄型軽量ノートパソコン搭載を狙う。これを受けシャープや富士通などがEfficeon搭載ノートパソコンの開発を表明。2003年末から2004年にかけてEfficeon搭載機の出荷が始まる見込みだ。

 従来のCrusoeが32ビット命令を最大4個同時実行できたのに対して,Efficeonでは最大8個の32ビット命令を同時実行できる。同社のテスト結果では1.1GHz版と米Intel社のPentium M 900MHzがほぼ同等の処理性能になったという。価格は未定だが,超低電圧版Pentium M 900MHzの241ドルに対抗するため,100ドル前後を予定する。

 ハードウェアの強化と同時に,x86命令の変換プログラム「Code Morphing Software」(CMS)の最適化機構も見直した。Transmetaはx86命令を解釈する回路を持たずソフトウェアで変換する方式を採っている。そのぶんCPUのトランジスタ数を削減して低消費電力にしている。半面,x86命令を変換するオーバーヘッドが問題だった。

 Efficeonの新CMSでは,命令を変換する単位を四つに分けて変換効率を上げる。具体的には,初回実行時にはx86命令を1命令単位で変換し,2回目以降は頻繁に繰り返される変換のパターンの粒度を上げていく。「4段階目では数百命令単位で変換する」(Transmeta最高技術責任者のDavid R. Ditzel副社長)という。

 2004年後半には製造プロセス・ルールを現行の0.13μmから90nmに微細化し,動作周波数の上限を2GHzに向上させる。90nm世代のEfficeon以降は,トランジスタの微細化に伴う「リーク電流」の削減を図る「LongRun2」技術の実装を進める。

 リーク電流はトランジスタの電極の間隔を小さくしたときに,トランジスタのオン/オフに関わらず電流が流れてしまうこと。微細化の限界を迎えつつある半導体業界全体の懸案である。Transmetaはトランジスタのスイッチング電圧を動的に変える「Variable Threshold Voltage CMOS」と実行負荷を把握するCMSによる制御を組み合わせることで,リーク電流を抑えるという。詳細は明らかにしていない。

(高橋 秀和=日経バイト)

米Transmeta社