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2003年9月25日,T-Engineフォーラムと米Microsoft社およびマイクロソフトは共同で,Microsoftの組み込み向けOS「Windows CE .NET」をTRONベースの組み込み向け実行環境「T-Engine」に移植することで合意したと発表した。T-Engineを利用する情報家電や携帯機器などの組み込み機器でWindows CE .NETのユーザー・インタフェースや動画像処理,リアルタイム・メッセージングなどのミドルウエア群を利用できるようになる。マイクロソフトは移植に向けT-Engineフォーラムへ幹事会社として入会。同社の調布技術センターとMicrosoftのWindows CE .NET開発者が中心となって移植作業を進める。
T-Engineは,T-Engineフォーラムが策定した組み込み機器のハードウェア仕様と,携帯電話やデジタルカメラで広く使われている組み込み向けOS「μITRON」仕様準拠のカーネル「T-Kernel」の総称。T-Engineフォーラムは2002年6月の発足以来,T-Engineの普及に向け,他OSのアプリケーションやミドルウエア群をT-Engine上で実行させる環境を整える活動を進めてきた。今回発表したWindows CE .NET移植もその一環。「Windows CE .NETは巨大なミドルウエア群と考えることができる。同じような機能を別々に開発し,上質なミドルウエアを共用できないのはあまりにも無駄が多い」(T-Engineフォーラム会長の坂村健氏)。今回発表されたWindows CE .NETの移植以外にも,すでに米MontaVista Software社が2003年3月にT-Engine向けLinux「T-Linux」の開発を発表しているなど,T-EngineへのOS移植はWindows CE .NETが初めてではない。
MicrosoftはT-EngineにWindows CE .NETを移植することにより,主に機械部品の制御で求められるマイクロ秒以下のリアルタイム処理性能をWindows CE .NET開発者に提供できる。同時に,T-Engineを採用する組み込み機器に向けてWindows Media PlayerやMessenger Serviceといった同社が推進するプラットフォームの普及も見込める。従来のWindows CE .NETとの棲み分けについては,「マイクロ秒レベルの割り込み処理を必要としないユーザーには,これまで通りのWindows CE .NETを提供する」(米Microsoft社の古川享副社長)という。
T-EngineにWindows CE .NETを移植する方法は大きく二つある。(1)割り込みやタスク・スケジューリングをT-Kernelで処理し,メモリーやその他ハードウェア資源は2分割する,(2)Windows CE .NETをT-Kernelで動作する一プログラムとして実装する,だ。(1)はT-Kernel経由で割り込みとスケジューリングするためにWindows CE .NETのカーネルの一部を作り替える程度で済む半面,ハードウェア資源の分割やそれに伴うデバイス・ドライバの2重管理が必要になるなどシステム開発者にとって負担が重い。(2)ではハードウェア制御とデバイス・ドライバ開発をT-Kernelに一本化できるものの,Windows CE .NETのカーネルがT-KernelのAPIで動作するようにWindows CE .NETのカーネルを全面的に書き換える必要がある。そこでMicrosoftはまず(1)の方法での製品化を目指し,最終的には(2)の実装を目標とする。古川氏は「発表だけして何もしない訳ではない。2003年12月11日より開催されるTRONSHOW2004で実際に動作するデモを含めた成果を発表する」と開発への取り組み姿勢に言及した。
米Microsoft社
T-Engineフォーラム
マイクロソフト