NTTデータは,2003年10月前後に実施するICタグ実証実験の詳細を明らかにした。マルエツ,丸紅,大日本印刷が協力する。生鮮食品や冷凍食品にICタグを貼り付け,流通センターや店舗で実際に運用して出てくる問題を洗い出す。在庫管理や入出庫管理,賞味期限の確認といった用途を見込んでいる。

 実のところ食品は,ICタグによる単品管理にはあまり向いていない。例えば野菜などの生鮮食品は,物理的に貼り付けるのが難しい。冷凍食品は霜が付くのでスキャナで読み取りにくくなる。また食品は単価が安いので,ICタグのコストを吸収しにくい。にもかかわらずあえて食品を題材として選んだのは「できるだけ多くの問題点を洗い出すため。食品でうまくできれば,ほかの商品にも応用しやすい」(NTTデータ ビジネス開発事業本部CRM/コンタクトセンタビジネスユニット長の吉川明夫氏)。

 今回の実験で確認するのは,大きく三つ。読み取り制度とマーケティング活動への反映,精算への適用,である。実際にICタグを使うと,ICタグを付けた商品がメーカーから卸業者を経由して店舗に届き,店頭に並ぶまでにさまざまなトラブルの懸念がある。タグが汚れたり,水に濡れたり,破損したりする危険性がある。そうした中で十分な読み取り精度が得られるかどうかを検証する。野菜や冷凍食品など50品目以上でテストする。

 次に,店頭でのマーケティング活動に有効かどうかを検証する。例えばスキャナを付けた大画面のパソコンを店頭に置いて,商品のIDに応じてその宣伝番組を視聴したり,生産地を調べられたりできるようにする。モニターの消費者にICタグ付きのカードを配り,それを店頭のパソコンで読み取ることも検討している。商品者一人ひとりの好みに合った宣伝をするためである。

 レジでの精算に使えるかどうかも確かめる。ショッピング・カートにICタグ付きの複数の商品を無造作に入れると,ICタグの読み取り精度は極端に落ちる。ICタグはスキャナと直角の向きになったり,2枚が重なったりするとほとんど読み取れない。それを運用でどの程度避けられるかを検証する。例えばカートの中に間仕切りを作り,それぞれに1個ずつ商品を入れてもらえば読み取り精度は上がる。そうした運用の効果を探る。

 ICタグに割り振るIDには,独自のコード体系を使う。コード体系の標準化は,米Auto-ID CenterやユビキタスIDセンターといった団体が進めているが,まだ仕様が固まっていない。そうした仕様に合わせることよりも,現場での運用面の検証を進めることが重要と判断した。ICタグの周波数は13.56MHzを使う。

(安東 一真=日経バイト)