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書籍向けICタグの試作システム登場,プライバシー保護は暗号化で
ICタグは,メモリーと簡単なロジック回路を持つ“ゴマ粒”大のICチップにアンテナを付けたもの。個々の書籍に固有のIDを付けて効率的な管理ができるようになる。一方でプライバシーの保護に懸念がある。ICタグ付きの書籍を購入者が持ち歩いた際に,第三者にそのタイトルなどを読み取られる恐れがある。IDには,現行のバーコードと同様に出版社や書籍名のコードが埋め込まれているからである。 それを避けるために今回の試作システムでは,IDを暗号化してICタグに書き込んだ。復号は,IDを一元管理するセンターでしか実行できない。復号したIDを入手するには,センターへのアクセス権を持つICタグスキャナが必要になる。第三者がスキャナでIDを読み取っても,センターにアクセスできなければ書籍の名前などは分からない。この仕組みはNTTが開発した。 IDの暗号化技術には公開鍵暗号方式を採用した。これは暗号鍵の管理を容易にするためである。一つの鍵を使う共通鍵暗号方式を採用すれば,IDを暗号化する出版社とセンターの両方が共通鍵を安全に管理する必要が出てくる。公開鍵暗号方式なら,出版社は公開鍵でIDを暗号化できる。公開鍵なら公開してもかまわないので管理は容易になる。秘密にすべき秘密鍵は,センターの一カ所で管理すれば良い。 ただし公開鍵暗号方式にはデメリットもある。暗号化したあとのIDサイズが一般に大きくなることだ。例えば96ビットのIDをRSAで暗号化すると「1000ビット程度になる」(NTT情報流通プラットフォーム研究所情報セキュリティプロジェクト セキュリティ社会科学グループの木下真吾 研究主任)。IDが大きくなれば,ICタグのメモリー容量が増やす必要があり,ICタグのコストが高くなる。そこでNTTは,暗号化したIDのサイズが小さくて済む楕円暗号(El Gamal)を採用した。楕円暗号だとサイズは「160〜320ビットで済む」(木下氏)と言う。 ICタグに埋め込むIDのフォーマットは,米MIT(Massachusetts Institute of Technology)大学が中心となって設立された「Auto-ID Center」が規定するEPC(Electronic Product Code)を採用した。試作システムでは,EPCを読み取り書籍の属性などを調べるソフトウェア「Savant」を利用。Savantを使い,書籍取次ぎ業者や書店が無線で検品できるようにしたり,書店の書棚で単品管理ができるようにした。書棚にスキャナを置いて,書籍が手に取られた回数や,立ち読みされた平均時間などを調べられる。 書籍業界では,ICタグ・ベンダーやシステム・ベンダーなど約80社とともに「ICタグ技術協力企業コンソーシアム」が2003年3月19日に発足された。すべての書籍にICタグを付けることを目指して動き出している。3社は今回の試作システムにより,ICタグの有用性を書籍業界にアピールしたい考えである。 (安東 一真=日経バイト)
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