「アセンブラでプログラムを書く人は少なくなったように,将来的にはプログラミング言語を使ってプログラムを書く人も少なくなるだろう」。2003年4月16日,オブジェクトテクノロジー研究所が主催したUML Forum / Tokyo 2003の基調講演で,米Object Management Group(OMG)のRichard Mark Soley会長が語ったソフトウェア開発の将来像である。その根拠となるのがUML 2.0だ。UML 2.0の目玉は,モデル駆動型アーキテクチャ(Model Driven Architecture:MDA)への対応。MDAでは,システムのモデルを作りさえすればあとはソースコードを自動生成してくれる。MDAを使えば,システムの開発やインテグレーション,保守にかかるコストが大幅に削減できるという。そして,UML 2.0がMDA普及を後押しするというのがその骨子だ。
Soley氏によれば,「システム構築にかかるコストの90%は,インテグレーションや保守の段階で発生する」。MDAはプログラミングだけでなく,そのあとの90%の作業も全般的に支援できるという。MDAでは,プラットフォームに依存しない抽象的なモデルを作成する。これを実装に対応付けるためのルールと組み合わせることにより,システムを定義する。このルールを変えれば,新たな実装に移行することも容易になる。
MDAでは,システムの構造や振る舞いをモデルで記述し,そこからソースコードを自動生成する。これを可能にするために,UML 2.0ではさまざまな仕様の拡張が盛り込まれている。例えば,振る舞いを定義するのに使うシーケンス図やアクティビティ図などで,階層的な記述や条件の指定ができるようになる。これにより「大きく複雑なシステムにおける振る舞いも,モデルだけで詳細に定義できる」(Soley氏)。
UML 2.0の仕様は,2003年3月24~28日に開催されたOMGの技術委員会総会でほぼ決定した。正式な採択は2003年6月になる見込みである。UML 2.0とほぼ同時期に,利用分野に特化したUMLの拡張仕様も公開される見込みだ。分散オブジェクト環境(Enterprise Distributed Object Computing:EDOC)や,組み込み,テスト,ミドルウェア用などの拡張仕様である。「既に金融システムや製造,通信など多くの分野でMDAが使われ,成功を収めている。UML 2.0とともに,MDAはますます普及していくことになるだろう」(Soley氏)。