NTTドコモは2003年3月6日,定額でPHSのデータ通信ができるサービス「@FreeD(アットフリード)」を同年4月1日より開始すると発表した。通信速度は32kビット/秒もしくは64kビット/秒。現行のデータ通信や通話と同じ「回線交換型」での提供となる。回線交換は通信している間,通信チャネルを占有する通信方式。このため,通信中はほかの通信/通話がそのチャネルに割り込むことができない。ただしNTTドコモでは,限られた無線チャネルを効率よく使えるように,データ通信していないときは自動的に無線区間のチャネルを切断する仕組み(ドーマント方式)を新たに導入する。

 PHSでの定額データ通信の実現方法は二つある。一つは今回NTTドコモが採用した回線交換。もう一つは先行するDDIポケットがAirH”で採用中のパケット交換である。AirH”は二つのパケット技術を用いている。一つは無線区間のパケット化。これにより1チャネルで最大4ユーザーを同時収容できる。もう一つのパケット化は,基地局とバックボーンを結ぶ部分。複数ユーザーのデータをパケット多重することで,データ中継の効率を高めることができる。

 今回,NTTドコモが定額のPHSデータ通信サービスを実現できたのはコストの定額化が図れたから。NTTドコモは東西NTTのISDN設備を利用してPHSを提供しているが,これまでNTTへの支払額は通信時間に応じた従量制となっていた。これが,今年2月に実施されたNTTの約款改定により,データ通信用途では定額にできるようになる。DDIポケットも東西NTTのISDN網経由でPHSを提供しているが,AirH”が使うパケット交換方式のISDN使用料は以前から定額だった。

 @FreeDを使うために必要となるアダプタは2種類ある。パナソニック製の「P-in Free 1P」とシャープ製の「P-in Free 1S」。どちらもコンパクト・フラッシュ形状である。前者は幅42.8mm×高さ56mm×厚み3.3mmでデータ通信のみ,後者は幅42.8mm×高さ49.8mm×厚み6mmで音声通話と携帯電話のデータ通信網(9600ビット/秒)を利用できる。@FreeDに対応予定のプロバイダは17社。料金体系は,月額4880円のプランと,年額4万8000円の二つのプランがある。別途プロバイダ料金がかかる。ちなみに,AirH”のつなぎ放題コース(年間契約)は,32kビット/秒が月額4930円,128kビット/秒が月額8430円である。

(堀内 かほり=日経バイト)