東京地方裁判所は2003年1月29日,日本レコード協会傘下のレコード会社19社,日本音楽著作権協会(JASRAC)がファイル交換サービスを提供していた日本エム・エム・オー(日本MMO)とその代表を相手取って起こした裁判で,レコード会社側の言い分を認める判決を下した。日本MMOはインターネット上でサーバーを介してファイルを交換するサービス「ファイルローグ」を運営していた。

 レコード会社側は同サービスのユーザーが楽曲データとリストを記録したファイルを著作権者の許諾なく違法に交換しているとして,2002年1月29日にサービスの停止を求める仮処分を申請していた。そして,同年2月28日に本訴訟を起こした。その後,同年4月9日に楽曲のタイトルやアーチスト名のファイル情報をユーザーに送信してはならないという仮処分命令が下され,日本MMOは1週間後にサービスを停止していた。

 東京地裁は今回の判決で次の三点を認定した。第一に日本MMOのファイル交換サービス「ファイルローグ」は著作権を侵害していること。第二に著作権を侵害した行為の主体はサービスの提供元である日本MMOであること。これはファイルローグを提供することで著作権を侵害することが予想できたのに,日本MMOが著作権を守る機構を盛り込まなかったことなどから判断された。第三は日本MMOとその代表である松田道人氏の両者が賠償責任を負うことである。なお同サービスを使ってファイルを交換していたユーザーによる著作権侵害については,今回の裁判では争っていない。

 JASRAC側の田中豊弁護士は「法律的な観点からすると,著作権侵害の主体を自らの行動で侵害しようとする人ではなく,サービスを提供する側にも適用した点は柔軟な判決といえる。また米国のNapster裁判と同じように日本でも違法な音楽ファイルの交換は許されないという判断がなされたことも国際的に大きな点」と判決を評価する。レコード会社側の前田哲男弁護士によると,「国内でファイル交換サービスの著作権侵害を認める判決が出されたのは今回が初めて」という。

 今回の東京地方裁判所の判断は中間判決である。今後,日本MMOと松田氏の賠償額を示した終局判決がなされる。遅くとも2003年内には言い渡される見込み。

 なお,裁判を起こしていたレコード会社はエイベックス,エピックレコードジャパン,キングレコード,コロムビアミュージックエンタテインメント,テイチクエンタテインメント,東芝イーエムアイ,徳間ジャパンコミュニケーションズ,トライエム,日本クラウン,パイオニアエル・ディー・シー,バーミリオンレコード,バップ,ビクターエンタテインメイント,ビーエムジーファンハウス,フォーライフミュージックエンタテイメント,プライエイド・レコーズ,ポニーキャニオン,ユニバーサルミュージック,ワーナーエンターテイメントジャパンの19社である。

(市嶋 洋平=日経バイト)