シャープは,2002年10月30~11月1日にパシフィコ横浜で開催されているディスプレイの展示会「LCD/PDP International 2002」で,プラスチック板を使用したTFT液晶を参考出展した。現在,液晶はガラス板を使っているが,プラスチック板にすると軽量化が可能で,衝撃に強い液晶を製造できる。用途としては,モバイル端末の他,シート状のコンピュータを想定している。

 今回展示したものは対角の長さが11cm(4.4インチ型)の反射型カラー液晶。解像度は240×240ドットで,表示色は26万色。外形寸法は幅95mm×奥行き95mm×高さ0.6mmで,9gと軽量だ。同程度の大きさの液晶は,ガラス基板の約1/3程度である。

 プラスチック基板の液晶を製造するには,液晶の膜を形成する(製膜)ときの温度が問題になる。プラスチック板だと高温で熱膨張してしまうためだ。そこで同社は,高温にも耐えられるプラスチック板を用いて,約200度で製造したという。今回作成した液晶がアモルファス液晶なので比較的低温で製膜できた。ちなみに低温ポリシリコン液晶をガラス基板に製膜する温度は約500度になる。

 シャープは,液晶分子間を電子が移動する速度が速いCGシリコン(Continuous Grain Silicom,連続粒界結晶シリコン)液晶の量産を開始している。CGシリコンは電子移動度が高いため液晶以外の論理回路も形成できる。例えばガラス基板にCPUを形成し,シート状のコンピュータを実現し得る。将来的にはプラスチック基板を使ったCGシリコン液晶を製造する技術も開発したいという。ただCGシリコンの製膜時の温度は低温ポリシリコンと同程度。プラスチック板に適用するには温度が高すぎる。製膜時の温度をプラスチック板が耐えられる200度まで下げる必要があり,この技術が確立していない。

(堀内 かほり=日経バイト)